2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ジョン・ソール『運命の町』

ジョン・ソールをどんどん読んでみる試み。始まり。「恐怖の金太郎飴作家」なる異名を持つほど同じパターンを使い回すソールのことですから、こちらもまた「引き合わせられた義理の家族がギクシャク」していった末に「主人公が身に覚えのない疑惑によって立…

マインドハンター

プロファイラー候補生達の演習場が「嵐の孤島」と化し、おまけに本物の殺人が! 犯人は仲間達の中に? という、かなり無理のある設定にまず笑ってしまう。そもそも今どきプロファイリングものは無いよな、と言いたくなるところ。 ところが、これが面白いんで…

インシデント

「処女・童貞は殺されない」ってのはスラッシャー映画のお約束ですが、この映画に登場するのは学園の処女・童貞を狙う殺人鬼。殺人鬼の性質を聞かされた保護者達は娘が処女かどうかで勝手に揉め、生徒達は当然のごとく乱交パーティーを開催。普通にいい感じ…

喜劇王

負け犬からの這い上がりストーリーと、ラブロマンス部分がどっちも中途半端なヘタレ脚本。主人公が俳優としての矜持を手に入れる展開なんて、もう何が何だかわからないくらい終盤めちゃくちゃ。それでいてキュートな味をいくらか感じさせるところはさすがチ…

アニー・プルー『ブロークバック・マウンテン』

例のアレの原作本。短編集から一篇のみ訳して文庫で出版ってすごい売り方。まあいいんだけど。まず訳文について言っておくと、訳出できなかったニュアンスをカッコ内に注釈入れて補足してる箇所が多すぎてわりと興醒め。ただ、訳者あとがきで述べられている…

ジョン・ソール『暗い森の少女』

精神障害を患う少女が無関係な罪を徐々にかぶせられてゆくところを読者はただ見守るしかない、というイヤな趣向がこの作者の『闇のなかの少女』*1とそっくり。とは言え、デビュー作であるこっちのほうが捻りの利いた設定で、『闇のなかの〜』は縮小再生産だ…

クラッシュ

人種差別を背景に描く群像劇。登場人物に向けられる眼差しがちょうど優しさと批判的な目7:3くらいの割合で、これが個人的にちょっと居心地悪かった。中途半端に甘い感じがしてしまって。とは言え、よく出来た映画で面白かったですよ。人々の人生の交差のさせ…

ナイト・オブ・ザ・スカイ

ジェラール・ピレスってこんなにダメだったっけか。置かれた状況もキャラ同士の関係も全て説明不足のまま突っ走って、盛り上がりそうになったところで寸止めする、なんかもうわざと退屈にしてるとしか思えないすごい脚本。戦闘機の視点(後部からのの視点が…

カール・ハイアセン『HOOT ホー』

タイトルが表しているのはフクロウの鳴き声。これだけでハイアセン読者にはどんな話なのかあらかたわかってしまったりするのかな。僕にはこれが初めてのハイアセンだったんだが、面白かった。裸足で疾走する謎の少年のイメージがいきなり冒頭から鮮烈だし、…

アサルト13 要塞警察

で、次に観たこっちでまた眠くなったというわけ。主人公が抱えている、自分の責任で仲間を死なせたというトラウマの克服と、警察署が汚職警官に襲われるメインプロットの絡ませ方がすごく乱暴でがっかり。やむなく共闘することになった警官と犯罪者達のそれ…

ウォーク・ザ・ライン/君につづく道

眠い目を擦って観に行ったら面白くてパッチリ目が覚めた。それくらいよくできた映画でした。僕はこのジョニー・キャッシュという人について何一つ知らないんだが、「ナイーヴと阿呆は紙一重」みたいなダメ男をホアキン・フェニックスがかなりの説得力をもっ…

ファニーゲーム

ごく普通の小金持ち一家をひたすら理不尽な暴力が襲う映画。動きが少なく静かな画面が極限まで緊張感を孕んでいって、もう心臓バクバク言わせながら見てしまった。このへんの技術的な面は文句なしに高く評価したい。ただ、製作側がどういうつもりで不快描写…

王は踊る

ルイ14世の寵愛を受けた宮廷音楽家リュリの一代記。リュリの音楽で王が踊るシーンがいくつか序盤に置かれていて、これがもう甘美で情熱的な愛の交歓の図以外の何物でもない美しさ。だからこそそこから紆余曲折あって王の寵愛を失ってゆくリュリの悲嘆にくれ…

ディーン・R・クーンツ『闇の囁き』

もしかしたらクーンツ読むのは初めてかも。そして、最初にこれを読んだのはたぶん間違いだった。ジョン・ソールとかが書きそうな思春期サイコホラー風の筋立てなんだけど、かなり救いのあるオチが用意されてて、あんまり怖がらせてくれないのがつまんない。…

ローレン・ケリー『連れていって、どこかへ』

作者ローレン・ケリーは覆面作家。その正体は訳者あとがきをチラッと見るだけでわかります。わかったところで興味を引かれて読んでみました。お話はトラウマ持ち情緒不安定女のサスペンス風味な自分探し。主人公の不安定さに同調する妙なテンションの語り口…

今野敏『隠蔽捜査』

これは熱い。連続殺人事件から浮上した不祥事の対応に追われる警察庁の中、一人ゆるぎない姿勢で真に正しい選択を訴える主人公がもう眩しいったら。この主人公、キャリアの官僚で相当なエリート意識を持っていて、最初嫌な奴っぽいんだが、周りが頼りなくフ…

テッド・デッカー『影の爆殺魔』

謎の連続爆破事件と対峙するうち、自分のトラウマを向き合うことになる主人公。そして明らかになる犯人の意外な正体は……という話なのだけど、ちっとも意外じゃありません。この種のネタはもう出尽くしてるんで、使うならもっと頭を捻った使い方でお願いしま…

奇人たちの晩餐会

バカをバカにして楽しむのが趣味の嫌味な金持ちが、未知なる大物バカの底抜けの善意によってあわや身の破滅か!ってな目に遭われされるコメディ。舞台のほとんど動かない演劇風の画面の中繰り広げられる、軽快な言葉のやり取りと皮肉な展開がなかなか楽しめ…

キング・イズ・アライヴ

極限状況でひたすら助けを待つ人々が織り成す“リアル”で痛々しい人間ドラマ。その“リアル”さ加減があまり嫌味でなく、となるとこういう映画は結構好きなのでした。『ドッグヴィル』みたいな悪趣味の極み展開が来るかなー?と思ってたら結局来なくて、それで…

マーサ・ミーツ・ボーイズ

なんてことない色恋沙汰を、ちょっと『運命じゃない人』みたいな仕掛けのある語りで見せる映画。監督のニック・ハムは二作目の『穴』も「藪の中」ものだったりしたから、ミステリ的なことをやるのが好きなんでしょうな。ただ、『穴』と同じくこれも凝り方が…

美しき野獣

まっすぐな若者二人がぶつかり合いながら腐った奴等を懲らしめる爽やかバディもの……じゃなかったからびっくりだ。なんとここまで救いのないオチでしたか。登場人物をやたらと泣き叫ばせる鬱陶しい演出が冒頭から気になってたのだけど、こういうオチにするの…

グラスハウス

主演女優をとにかく見せることを優先するあまり緩めになる類のサスペンス。でも面白かったですよ。楽に見れて106分が長くない。ただ、例えば『隣人は静かに笑う』なんかと比べると“善人のはずだが怪しい夫妻”の怪しさの質が薄っぺらすぎて笑う。夫のほうなん…

ジャーヘッド

戦場で主役になるつもりだった兵士達の「約束が違う」ってな心情をジリジリ盛り上げていく描き方が巧い。果たされなかった約束はいつまでも心の中に残ってしまうわけで、そういう頭の悪いセンチメンタリズムを一人称で語る主人公がジェイク・ギレンホールっ…

PROMISE

すごい! 噂には聞いていたがここまでバカだとは。滅多にないくらい隙だらけの画面作りに圧倒されました。CGが安っちいだけでなく、色彩の統制が滅茶苦茶。でも、俊足が生み出す美しい情景の描き方はわりと好きだな。美女が侯爵の屋敷から逃げ出すシークエン…

パトリシア・ハイスミス『11の物語』

タイトル通りのイヤ短編×11。旧版のほうが100円で手に入りました。よかった。というわけで、この短編集はとにかくカタツムリです。「かたつむり観察者」と「クレイヴァリング教授の新発見」の二編がカタツムリをグロテスクな得体の知れないものとして描いて…

エラリー・クイーン『十日間の不思議』

初めて読むライツヴィルもの。ライツヴィルシリーズとしては三作目なので、『災厄の町』や『フォックス家の殺人』のネタバレらしきものがあってビクビク。ささっと読み飛ばしました。それはさておき、なるほどこれは名作ですね。この種のネタの元祖なんだろ…

ネイムレス 無名恐怖

スペイン製サスペンス。わりとホラーっぽく始まるのでそのセンを期待していたら、事件の裏で糸を引いていたモノの正体が明らかになる中盤以降は、ただの展開がまだるっこしい地味なサスペンスになってしまった。このモノを怖がれというのならもっとそれらし…

スプラッシュ

主人公トム・ハンクスが恋に落ちた謎の美女の正体は人魚だった! 人魚って。という映画。脇役の使い方なんかなかなか巧くて泣かせられたけど、主役の二人が障害を乗り越える力を持つほどに強く結びついて見えなかったのが残念。荒唐無稽な設定が感動的なドラ…

ジェフリー・ディーヴァー『クリスマス・プレゼント』

よく出来た面白いミステリ短編集でした。終わり。という感想で済ませたくなる本なんですねこれが。これは本当に嘘偽りなく粒よりの短編が揃っていて、各編にきちんと意外な展開が組み込まれ、痛快だったり意地悪だったりグラグラ崩壊感に満ちていたりと美味…

星願 あなたにもういちど

香港製の心霊ラブストーリー。みなさんご想像の通り恐ろしくクサいんだが、辟易することなく素直に感じ入ることのできるいいお話。主人公の恋敵まで含めて悪い人が一人も出て来ない暖かい脚本が好き。ヒロインが主人公を探して走り回るシーンは泣けた。ただ…