ジェフリー・ディーヴァー『クリスマス・プレゼント』

よく出来た面白いミステリ短編集でした。終わり。という感想で済ませたくなる本なんですねこれが。これは本当に嘘偽りなく粒よりの短編が揃っていて、各編にきちんと意外な展開が組み込まれ、痛快だったり意地悪だったりグラグラ崩壊感に満ちていたりと美味なムードでラストを締める職人芸が堪能できる。特に「三角関係」と「被包含犯罪」のオチには虚を衝かれた。「この世はすべてひとつの舞台」における某文豪の登場のさせ方も好き。
ただ、無茶を言わせていただければ、“上手な短編ミステリ”を一歩も踏み外してないところがつまんなかった。いや、つまんなくはないんだが……つまんなかった。最近スタンリイ・エリンの短編集とか読んだからどうもそっちの風味を求めてしまったようです。それとも僕、もうこういうのは要らなくなったのかもしれないなあ。直球ど真ん中なミステリファンにお薦め。