2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ミート・ザ・ペアレンツ2

日本公開が遅れたせいですっかり盛り下がった感のあるこの映画。今度は婿の実家が舞台ということで、舅と実父の強烈キャラ対決にでもなるのかと思ったら、あらら、やってることは前作とほぼ同じですよ。状況は前作と違う(今度は舅のほうが“よそ者”)のに、…

鳥飼否宇『激走 福岡国際マラソン 42.195キロの謎』

今年三冊目の否宇たんの新刊ですよ。嬉しいったらないな。今回は『ジェシカが駆け抜けた七年間について』や『42.195 すべては始めから不可能だった』などに続くマラソン・ミステリ。なんだ、流行ってるのか? ともかく、いかにもこの作家っぽい稚気溢れる豪…

保科昌彦『ゲスト』

作者は日本ホラー小説大賞長編賞を取った人で、今回初めて読みました。で、あんまり面白くなかった。狂気の伝染をテーマにしたJホラー風の筋立ては確かに結構怖いし、どんどん絶望が増して来る展開も緊張感があって悪くないんだが、肝心の“狂気の伝染”の元に…

ノンストップ・ガール

「尽くす女」が行き過ぎて逃げた夫のストーカーと化す主人公の奇矯な行動が実に淡々と映されていて、そのギャップが笑い所となるようなコメディ。なんだろうけど、あまり笑えず、感心もできず。出て来る人達のキャラクターの微妙な歪みは楽しいんだけど、そ…

C.S.ルイス『ライオンと魔女』

これまた映画化されることになったナルニア国ものがたりシリーズ。とりあえず来春映画版が公開予定の1巻目を読んでみました。おおー、面白い! 初めは確かによそ者だった四兄弟が、どんどんナルニア国に馴染んでいってしまう展開が何やらアブナくて良い。そ…

有栖川有栖『幻想運河』

罰ゲームで読まされた本ですが、そんなに悪くなかった。と言うか、これ結構面白いよ!>F君 有栖川ってこんなのも書けるんだ。えーと、時期的に危険な人の名前を敢えて出してみますとですね、これは飛鳥部勝則に近い。飛鳥部をもっとずっと平易にして青臭く…

ジム・キャリーはMr.ダマー

ファレリー兄弟デビュー作。下ネタ全般及び障害者ネタ及び動物虐待ネタがこの時点で全て揃っているのには感心するけれど、どれも突き抜けていなくて中途半端。あの絶滅危惧種はもっとヒドい死に方をするべきでしょう! ダメ友情ものとしてもイマイチかな。 …

ルーマー・ゴッデン『人形の家』

おかしな人形達の寄り集まりが家族だなんて可笑しいけれど、みんなで必死に願って手に入れた素敵な家は本当に素敵だったわけで、これが音を立てて崩れてゆく様は悲しくてたまらない。ちょっと頭の足りない、でもそこがチャーミングだったはずのことりさんの…

真実の囁き

セリフにも何度も出て来る「境界線」。この、人種と人種、世代と世代の間にある強固でとても越えられなさそうなものの向こう側が、最後の最後にちょっとだけ透けて見える、というさり気ないメッセージ性がいい。あくまで歩み寄りの可能性だけを示して実際に…

アストリッド・リンドグレーン『はるかな国の兄弟』

あってはならない冒険に立ち向かい、どこまでもとり憑かれながら、たき火とお話の時代の国を求めて自殺を繰り返す二人の兄弟! うーん、いかにもなファンタジー世界を見せておきながら、なんて根暗なんだ。臆病な弟君がクライマックスで最大の勇気を振り絞っ…

西條奈加『金春屋ゴメス』

第17回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。うーん、『太陽の塔』→『ラス・マンチャス通信』と来てこれかあ。いや、決して面白くないわけじゃないし巧いのだけど、「近未来、江戸時代そのまんまの暮らしに浸る江戸国が日本から独立!」という奇天烈な設定から…

フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い

やたらと人の命が安く、バンバン死にまくるわりにどうしてこんな呑気なムードが漂ってるんだろう。ほとんど緊張感のない四兄弟の仲良しこよしはまあ微笑ましいものとして見られるんだが、だったら無理に雰囲気重くするために死人を出すなよと言いたい。何だ…

あせごのまん『余は如何にして服部ヒロシとなりしか』

短編集。これまた『チューイングボーン』と同じで、面白くなりそうな要素はあるのに、勿体無い……という感じ。全体的に、文体と途中までの展開はいい感じに捩くれているにオチのつけ方が安易で、ラストでちょっとガッカリさせられる。 例えば「浅水瀬」なんて…

大山尚利『チューイングボーン』

ダメ人間な主人公の陰鬱な心情描写にまみれた陰鬱な日々。その中に紛れ込んでくる奇妙なモノ。静かに狂ってゆく主人公。と来るとまるで福澤徹三みたいですが、うーん、いろいろと惜しい。基本的に冗長なんだよな。主人公がやたらと理屈をこねて自己分析する…

アンフォゲタブル

なかなか模範的なサスペンスでした。展開の意外性に欲を出しすぎなかったのが良かったのか、主人公が最初の記憶転移に挑むシーン以降はダレ場がなく面白い。主演のレイ・リオッタはヒーヒーハーハー言って大発奮。それでも完全に“頭のおかしい人”になってし…

恒川光太郎『夜市』

第12回日本ホラー小説大賞受賞作。表題作と「風の古道」を収録していて、僕は断然表題作のほうが気に入った。化け物達の市場を舞台に、奇妙で切ない運命を背負ったあの人やこの人の来歴が語られて、その切なさが最高潮に達したあたりですーっとぼやけるよう…

福田栄一『玉響荘のユーウツ』

よく出来てはいますが、まあフツー。あまり引っ掛かるところはなかったかな。こういうのはむしろ映画で観たい。某古典ミステリのネタを引用したあたりが面白かった。あとはまあ、いくつかの事件に思わぬ結びつきが……という展開や悪者を懲らしめる作戦が全く…

桜庭一樹『ブルースカイ』

うーん、少女に興味はあるのだけれど、僕の好きなそれは「おじさん」の頭の中にしか存在しない少女なんだよな、という気持ちで読み進めてゆくと、あら、意外に良かった。あえて語り尽くさないことによって広大な世界観を背後にチラつかせるタイプの見せ方が…

ダーク・ウォーター

オリジナルの『仄暗い水の底から』はあれはあれでいろいろ問題のある映画だったけれど、これに比べるとすごく面白かったなあ、と思える。もう、怖くないのなんのって腹立つくらい。主人公の娘がトイレで怪異に遭うシーンなんて何かのギャグかという感じだっ…

石持浅海『扉は閉ざされたまま』

「密室が開かれない密室殺人」という本格ミステリマニア的に美味しすぎるネタを思いついたのがよりによってこの作家かー。楽しかったのは密室を開けない理由くらいかな。あとは思い込みの激しいサイコ女とただのアホ男がすごく遠回りにイチャイチャするのを…

ドナ・アンドリューズ『恋するA・I探偵』

主人公の人工知能チューリング・ホッパーが恋する乙女的暴走を見せてくれるのかと思ったら、暴走どころかえらくまだるっこしい。チューリングが自身を安楽椅子探偵になぞらえるくだりがあったりするんだが、そうではなくて実の所は「足で解決」タイプのミス…

イン・ハー・シューズ

こじれていた人間関係がそれぞれのほんのちょっとした労わり合いと反省で奇跡のように(でもあくまでささやかに)回復して、前より大きく暖かなサークルができる、という話は好きなので、これも好きです。寂しい女が寂しくなくなるのに特に男の助けは必要な…

清涼院流水『ぶらんでぃっしゅ?』

いやー、御大は変わらないね。結婚しても、父親になっても。というわけで、ご結婚とご子息誕生、それとついでに初のハードカバー刊行を祝しておきます。ご子息の名前はどうやら「ライト」というようです。御大にしては普通だね! よく我慢したね! 以上、最…

イザベル・アジェンデ『神と野獣の都』

この作家については何も知らないのですが、へー、有名なんだ。極限の地のサバイバル生活で乱れる人間関係、あの人やこの人の意外な姿、積もる死体、というあたりはB級クリーチャー映画を観るようなつもりで楽しめたけれど、少年少女がほとんど抵抗なくスピリ…

親切なクムジャさん

うはは。オリエント急行かよ! というわけで、クライマックスの復讐実行の場面は悪趣味なコントみたいで実によろしい。哀切さと滑稽さと残酷さと皮肉さが全部入り混じって、観ているこっちの気持ちがフラつく異様な盛り上がり。でも観終わって振り返るとそこ…

東野圭吾『容疑者Xの献身』

ええー? こりゃ不満だわ。こういう陰から守るタイプの男のナルシスティックな自己犠牲は「誰にも気付かれず」「全く報われない」からこそ光る類のものでしょうに。そもそも倒叙ミステリに仕立てたのが間違いだ。スリーピング・マーダーものなら良かった。あ…

A・J・ジェイコブズ『驚異の百科事典男 世界一頭のいい人間になる!』

わー、面白かった。つまりこれは「トリヴィアルな小ネタ(わりと低俗な類)満載な『ブリタニカ百科事典』全巻読破日記」であると同時に、「そんな不毛なことに挑戦してしまう変な男の日記」でもあるわけですね。小ネタへのツッコミや日常描写から垣間見える…

今野緒雪『マリア様がみてる 涼風さつさつ』

こっちはなかなか。花寺学院の学園祭というお祭り騒ぎがバックに置かれてあるせいか、それに歩調を合わせて流れてゆくリリアン女学園の日常がなんだかとても微笑ましく、愛らしく感じられる。裕巳のストーカー騒ぎだのといった物騒な出来事も、学園祭当日へ…

今野緒雪『マリア様がみてる 真夏の一ページ』

夏休み編ということで弛緩しまくり。「略してOK大作戦(仮)」はなんだかお寒い。祥子さま絡みのユーモラスなお話はいつもこうだ……。見所は、例によって些細なことで動揺しすぎる裕巳のアブナい心理描写くらいか。 「おじいさんと一緒」はトリックの仕掛け方…

辻村深月『凍りのくじら』

イマイチ。前作『子どもたちは夜と遊ぶ』のほうが好き。トリックの仕掛け方がミエミエな上に効果的でないし、何より問題なのは、主人公の勘違いっぷりに比して終盤の反省の度合いが十分でないので、ハッピーエンドが不当なものに感じられること。要するに、…