有栖川有栖『幻想運河』

罰ゲームで読まされた本ですが、そんなに悪くなかった。と言うか、これ結構面白いよ！＞F君　有栖川ってこんなのも書けるんだ。えーと、時期的に危険な人の名前を敢えて出してみますとですね、これは飛鳥部勝則に近い。飛鳥部をもっとずっと平易にして青臭くした感じ。
酩酊感たっぷりの幻想的なムードに本格ミステリとしてのオチが付いてしまわず、かと言ってスーパーナチュラルな要素にも引き摺られず、宙ぶらりんなまま美しいラストシーンに至るという展開に深みがあって良い。解釈の余地を残すとかいうのとも違った意味で。仲良しグループの成員であるはずの登場人物間に生じる凄まじいディスコミュニケーションがとても悲しい。