2005-01-01から1年間の記事一覧

柾悟郎『さまよえる天使』

えー、この作家のことは僕は全然知らないんですが、面白かったです。<静物の人>と呼ばれる、普通の人間の300分の1の速さで生きる者達と関わった人々のお話×6。短編の一編一編の独立した面白さは実はそれほどでもないのだけど、通して読むと、奇妙で穏やか…

恋のミニスカ ウエポン

レズビアン要素入り低予算版チャーリーズ・エンジェル。なんだけど、これはかなり強力ですよ。オンナノコ映画としては本家より上。スパイ学園に集った個性バラバラな女の子達が生き生きとぶつかり合うだけで俄然楽しくなってくるし、女の子同士の友情と恋愛…

アイドルとデートする方法

純情可憐な主人公が懸想する人気男性アイドルと、そんな主人公を見守る幼馴染み。どちらが恋のバトルに勝つかは分かり切っているこの種の映画のポイントは一つ。負ける方をいかにスマートに退場させるか、ということです。実際、この映画のライバル退場の図…

俺たちニュースキャスター

隅々まで弛緩し切ったコメディ。なんだけど、かなり笑えてしまった自分に愕然。出演者が内輪で楽しそうにしてるのが決して不快感に繋がらず、逆に微笑ましさを感じてしまう種類の映画でした。主人公とヒロインがベッドで合体!した途端に、二人がCGの雲を笑…

最後の恋のはじめ方

かなりよく出来たロマンティック・コメディ。主演のウィル・スミスを十分に優遇しつつも俺様映画臭を周到に排除してあって、気持ちよく見られる。プレイボーイを気取ってもナード時代の恋の傷を振り切れない主人公と、主人公が手助けする現在進行形でナード…

ハービー/機械じかけのキューピッド

いまいち詰めの甘い脚本で、どうにも盛り上がらず。主人公(と父親)がかつての事故で負ったトラウマをきちんと描いてくれないと、終盤の展開が死んでしまうじゃないか。無駄に多いキャラはあまり描き分けられてないし(ライバルの腰巾着は一人でよし。その…

ライフ・アクアティック

前作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』でも感じたある種の嫌らしさ(作り込まれすぎててどこにも入れない!)が今回は最後まで消えてくれなくて、ダメでした。最終的に暖かい家族の繋がりが見えた前作と違って、今作の人間達はヌルーく傷を舐め合ってるよう…

ステップフォード・ワイフ

原作のオチをもう二ひねりくらいした皮肉なアレンジが効いてる。そりゃまあ女の妄執は男の妄執なんかよりずっとタチが悪いものね。こうなるのもむべなるかな。愉快愉快。ただしラストシーン(テレビ出演のとこ)は蛇足だ。あれでガックリきた。あと、ゲイ夫…

13 LOVE 30

すごく面白いんだけど、これは……。「時が経つと間違いは正せなくなる」というテーマを前面に押し出そうとするあまり、やたらと後ろ向きなハッピーエンドになってしまいました。 おそらく意図するところはマーク・ラファロがメイキングで言っている通り「反ラ…

VOW nano!

VOWの携帯サイトに投稿されたネタを中心に収録。そのせいなのかどうか、以前に載ったネタのダブり掲載も多いです。「ソフトクムーリ」なんて基本じゃん。僕はと言えば毎度のことながらおかしな日本語ネタが気に入りましたよ。「ガラスがこされる」とか。あと…

ディック&ジェーン 復讐は最高!

これは『ラットレース』みたいな、いまいち笑いが弾けないヌルいコメディの最後にちょっと“感動的”なオチを付けてお茶を濁す、というタイプの映画ですね。そんなことじゃ誤魔化されないぞ、と思った。まあとにかくつまらんです。 唯一の見所はティア・レオー…

アメリカン・パイ in バンド合宿

アメパイシリーズ番外編。本シリーズと違って学園階級間恋愛及び学園階級間友情の成立にあまり爽快感がないところがつまらないのだけど、一貫したベタッとした甘さで一本の映画としてはまとまってるかな。最初はスティフラーの弟(今回の主役)が何故こんな…

スケルトン・キー

これ、オチは悪くないんだけど、そこに至るまでの過程が全然盛り上がらないのは、不気味な館の雰囲気に追い詰められてゆく主人公にマゾっ気が足りないせいでしょう。ケイト・ハドソンじゃ骨太すぎる。余命幾ばくも無い老人に父の面影を重ねて過剰に思い入れ…

綴り字のシーズン

驚いたことにそこそこ原作*1に忠実でした。絶対にやらないだろうと思っていた、主人公の少女が宗教的高揚に達して床に倒れ伏し、全身をビクビク痙攣させるシーンまでやっていたのにはびっくり。他にも、母親の「万華鏡の部屋」内部の様子だの、少女が見るビ…

久住四季『トリックスターズ』

なんとも雑で困った。SF(と言うか、この場合はファンタジーなんだが)ミステリは最低限特殊設定のルールを明確にしてくれないとどうにもならないですよー。キャラクターがペラッペラに薄いのは終盤の鬱展開を際立たせるためにわざとやってるんだろうなー、…

チキン・リトル

プロローグが猛烈にダメでどん引きしたものの、終わってみるとそんなに悪くなかった。最近のディズニーアニメでは出来がいいほうでしょう。いまいち立体感に乏しいCGキャラ*1と未整理な脚本に囲まれながらもボイスキャストの皆さんが頑張って頑張って、それ…

遠藤徹『弁頭屋』

『姉飼』は未読なので、この作家の本を読むのは初めて。日常の中にシュールでグロテスクなモノが当然のような顔をして紛れ込んでいる、という作風なのかなあ、そういうのは好きだ。と思って一冊読み通してみると、そういう収録作ばかりでもなかった。という…

エコーズ

つまんねえ……。監督が『シークレット・ウィンドウ』の人というのに非常に納得。あれと同種のつまらなさです。リチャード・マシスン原作(!)によるプロットはありがちな「何かを訴える自縛霊もの」で、別にそれはいいんだが、幽霊の望みが(観客に)明らか…

ナンシー関『何はさておき』

文庫版刊行もこれで本当に最後ですよ。おかしいな寂しいな。 と言うわけで今回個人的に気に入ったネタを列挙。「インパク」と大原麗子の奇妙な結びつき/氷川きよしは久々の純粋「バカ」物件/ネイチャーメイドのCMの男が何か嫌……と思ってたらあれってクドカ…

50回目のファースト・キス

メメント病(短期記憶が1日しかもたない)を患ったヒロインとの恋物語、という突飛な設定を除けば実に他愛ないお話であるのに、意外なほど泣けた。これはやはりキャスティングの勝利かな。 主演のアダム・サンドラーとドリュー・バリモアは、「そんな毎日毎…

高橋源一郎『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』

だからこういうのは感想が書きにくい。全収録作を通じて、普通なら何らかの共感を得て始めて成立するキャラクターが惨めなまんまで物語の中に放り出されているのが、無味無臭な虚しさを醸し出す、という感じ。「無味無臭な虚しさ」ってのも変ですが、そのへ…

東雅夫編『闇夜に怪を語れば 百物語ホラー傑作選』

サブタイトルが示している通りの、百物語にまつわるアンソロジー。収録作には非ホラー作品もあって、その代表格、森鴎外の「百物語」はこの並びの中に置かれると、パロディと言うか、ツッコミ的な役割を果たしているようで面白かった。何しろこれから百物語…

ロード・オブ・ウォー

主人公が悪魔の商売だとは知りつつ武器売買にハマってゆくのは、生まれ持った業ゆえのことであって、それはとても悲しいことだよね、という風に見せたいんだろうけど、全然“業”って感じがしないです。そもそも主人公は武器商人としての才能があるように見え…

ハーブ・チャップマン『カインの檻』

事件の発生から犯人の逮捕を経てその犯人の処刑まで。ストーリーの展開にはほとんど重きを置かず、サイコパスの心理の異様さ、そしてその異様さに翻弄される人々の描写だけで全656ページを保たせるこの力量は結構すごいかも。特に、サイコパスがその心の奥に…

キング・コング

度が合わなくなってきたメガネのこともすぐ忘れるくらいの絵力でどかーんと展開される映像はさすがにすごい。草食恐竜の群れから必死で逃げるシーンなんかは大興奮でした。そして沈む日と昇る日を一緒に眺める一人と一匹の姿はえらくロマンチックで哀しくて…

スタンリイ・エリン『最後の一壜』

前作『九時から五時までの男』の意地悪な印象とはわりと違って、普通にミステリしてる収録作も結構多め。とは言え、“善良”な精神が思わぬところでダークな一面を見せる、という展開が多く見られて、そこが面白かった。オチとしてはあくまで綺麗なのに、それ…

バットマン ビギンズ

えーと、一番期待してたキャラ立ちの面について言えば、これはキャスティングに頼りすぎだろう。そりゃこれだけの豪華キャストを揃えれば、キャラなんて顔が語ってくれるんだが、脚本の支援がないとそのキャラも動かないぜー? そりゃ新シリーズ一作目だから…

御影瑛路『僕らはどこにも開かない』

初期の浦賀和宏みたいな、勘違い男子ののさばりを許す世界観に、あー、ハイハイ、まあこのタイトルでこの表紙だもんな、覚悟はしてましたよ、読んでみた僕が悪いですよ、と投げやりに読み進めてみると……えー、そんな適当臭いオチ? 最後だけ取って付けたよう…

近藤史恵『モップの精は深夜に現れる』

シリーズ2作目。と言うか、このシリーズを続けるとは思わなかった。作者自身も語っているように、探偵役キリコは今や“羽衣を奪われた天使”であって、そんな彼女が前と同じように不思議な存在感でもって事件を解決してみせてもそれほど説得力がないんだもの。…

『ジャーロ』傑作短編アンソロジー(3)『夜明けのフロスト』

時節も時節ということで、クリスマスにまつわるミステリのアンソロジー。ダグ・アリン「あの子は誰なの?」、レジナルド・ヒル「お宝の猿」あたりはクリスマス・ストーリーらしいささやかな暖かみを感じられて良かった。特に後者はシリーズ探偵ダルジール警…