高橋源一郎『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』

だからこういうのは感想が書きにくい。全収録作を通じて、普通なら何らかの共感を得て始めて成立するキャラクターが惨めなまんまで物語の中に放り出されているのが、無味無臭な虚しさを醸し出す、という感じ。「無味無臭な虚しさ」ってのも変ですが、そのへんの変なニュアンスも含めてそういう感じ。
集中のベストは他に比べてどーんと長い「キムラサクヤの「秘かな欲望」、マツシマナナヨの「秘かな願望」」。女性誌やらAVやらの風俗の取り込み方がこれまた虚しくて良い。JJってそんな雑誌だったんだ。他、虚空へ無限に吸い込まれ続けるような感覚の「ウィンドウズ」も面白かった。