東雅夫編『闇夜に怪を語れば 百物語ホラー傑作選』

サブタイトルが示している通りの、百物語にまつわるアンソロジー。収録作には非ホラー作品もあって、その代表格、森鴎外の「百物語」はこの並びの中に置かれると、パロディと言うか、ツッコミ的な役割を果たしているようで面白かった。何しろこれから百物語が始まるってときに主人公が帰っちゃうんですよ。つまんなそうだからって。主人公の嫌味ったらしい人間観察も題材とよく調和して、これはなかなかの収穫。
ホラー方面では既読のものを除くと、遠藤周作「蜘蛛」、畑耕一「怪談会」、倉阪鬼一郎「百物語異聞」あたりが良かった。特に「百物語異聞」は怪談マニア達の人生がその安っぽさを極めたあたりで急に幻想味を帯びる様が切なくて、えも言われぬ味わい。他、美術論なのに下手な怪談よりよっぽどおぞましい花田清輝「百物語」も好き。