A・J・ジェイコブズ『驚異の百科事典男 世界一頭のいい人間になる!』

わー、面白かった。つまりこれは「トリヴィアルな小ネタ(わりと低俗な類)満載な『ブリタニカ百科事典』全巻読破日記」であると同時に、「そんな不毛なことに挑戦してしまう変な男の日記」でもあるわけですね。小ネタへのツッコミや日常描写から垣間見える主人公(つまりは著者自身)のキャラクターが痛々しすぎず常識人すぎずでバランスが取れていて、とても馴染みやすいのがいい。
あくまで変人日記として読むなら、この本最大のハイライトは何と言っても<メンサ>*1の会合へ主人公が乗り込むくだり。メンサ会員がニートばっかりだったり、知的な会話に混ざりたいと思って近づいていくとスター・トレック談義をしていたり、「抱きしめて!」シールなんていうアホみたいな制度を持っていたりしてワハハと笑っていたら、主人公も負けず劣らずイタい行動(聞かれてもいない知識を絶叫して披露)に出る。このへんのユーモアはバランス感覚に溢れていてすごく好き。
帯には映画化決定とあったけど、本当かな。あの人やあの人に特別出演を頼むのが大変そうだけど、実現すればすごく面白そうだ。ちなみに本書は著者が『エスクァイア』の記者なせいでポップ・カルチャー方面の小ネタも無駄に満載なので、映画好きにもわりとお薦め。