大山尚利『チューイングボーン』

ダメ人間な主人公の陰鬱な心情描写にまみれた陰鬱な日々。その中に紛れ込んでくる奇妙なモノ。静かに狂ってゆく主人公。と来るとまるで福澤徹三みたいですが、うーん、いろいろと惜しい。基本的に冗長なんだよな。主人公がやたらと理屈をこねて自己分析するんだが、これが嘘臭くてかなわなかった。もっとさり気なく説得力のある狂い方を見せてくれれば。
主人公のバイト仲間の中国人のキャラだとか、何度も歯医者に通わされるくだりだとか、主人公がチョコレートばかり食べる描写だとか、ラストのあたりで犬が……の場面とか、不快な雰囲気を盛り上げる小道具は部分的にすごく秀逸なので、返す返すも惜しい。