クラッシュ

人種差別を背景に描く群像劇。登場人物に向けられる眼差しがちょうど優しさと批判的な目7:3くらいの割合で、これが個人的にちょっと居心地悪かった。中途半端に甘い感じがしてしまって。とは言え、よく出来た映画で面白かったですよ。人々の人生の交差のさせ方は堂に入ってるし、生と死のイメージをあざとく利用して見せ場を作る手つきも慣れたもの。ただ、個々の挿話を取り出すとわりと凡庸ではあるかな。目新しいお話は透明マントのくだりくらいだった気がする。
出演陣は見事なアンサンブル・キャストという感じで文句なし。この映画で名を上げたらしいテレンス・ハワードは確かに苦悩演技に説得力があって良い。怖そうだけど優しいパパ役のマイケル・ペーニャもいい感じ。あとは有名俳優の配置の仕方も面白くて、ライアン・フィリップをこの役に据えるセンスはなかなかだと思った。ティーン向けスターだった頃のイメージを引きずり続けてる彼のキャラを踏まえると実に皮肉だ。