ローレン・ケリー『連れていって、どこかへ』

作者ローレン・ケリーは覆面作家。その正体は訳者あとがきをチラッと見るだけでわかります。わかったところで興味を引かれて読んでみました。お話はトラウマ持ち情緒不安定女のサスペンス風味な自分探し。主人公の不安定さに同調する妙なテンションの語り口が特徴的で、でも読みにくくはなく、なかなか巧い。
で、面白かったかというと……これが微妙なところなんですね。いかにも脆弱な主人公が今にも壊されそうになりながらも、意外にあっさりといろんなことを通過して流れてゆく展開の不穏な感じは好き。あとはどうにも落ち着き所のないこの雰囲気を楽しめるかどうかかな。自分としてはもっと鮮やかな破綻が見たかった気がしないでもない。