今野敏『隠蔽捜査』

これは熱い。連続殺人事件から浮上した不祥事の対応に追われる警察庁の中、一人ゆるぎない姿勢で真に正しい選択を訴える主人公がもう眩しいったら。この主人公、キャリアの官僚で相当なエリート意識を持っていて、最初嫌な奴っぽいんだが、周りが頼りなくフラフラするにつれコイツこそ理想の警察官僚なんじゃないか？という気がしてくる。そういう描き方が巧かった。
主人公と幼馴染み（元イジメイジメられの関係）のそれぞれに真っ当な信条のぶつかり合いや、国に滅私奉公して来た主人公がこの上なく真摯に家族に向かい合う瞬間などなど、シビアな情報戦のそこかしこに挿入された人間ドラマの盛り上がりは尋常じゃない。「おまえは何様のつもりだ」「官房の総務課長です」とか、「国のために働きなさい」とか、ベタだけど燃えるよなあ。それから忘れずに付け加えておきますが、男の世界の熱いお話なので、その筋の人なら燃えるだけじゃなくて萌えるよ。お薦め。