パトリシア・ハイスミス『11の物語』

タイトル通りのイヤ短編×11。旧版のほうが100円で手に入りました。よかった。というわけで、この短編集はとにかくカタツムリです。「かたつむり観察者」と「クレイヴァリング教授の新発見」の二編がカタツムリをグロテスクな得体の知れないものとして描いていてすごい。特に前者は、“静か”な“増殖”というものの恐ろしさを描き切っていて素敵。まるでカタツムリの群れに重く圧し掛かられるような読み心地。
他には、主人公の少年の(恐ろしく無理解な母親による)追い詰められっぷりが半端じゃなく、これじゃ心が歪んでも仕方ないな、と説得される「すっぽん」とか、不穏なムードが最高潮に達したまま微動だにせず終わってしまう「愛の叫び」あたりが好き。