2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

小林泰三『海を見る人』

著者初のハードSF短編集という触れ込みで全7篇収録。これはほんとにハードSFで僕には理解できなかった偽科学的設定がたくさんあるのだけど(特に『時計の中のレンズ』と『天獄と地国』の世界設定が理解できなかったのは辛かった。図解がほしい……)、そこはや…

クライシス・オブ・アメリカ

戦争の英雄となり、ついには副大統領候補となったかつての部下のニュースを見、胸がざわつく主人公。彼が武功を立てたはずのあの日の自分達の記憶は確かに本物か……?だとしたら、毎晩夢に見る自分達が洗脳を受ける光景はなんなのか……というお話。 恥ずかしな…

シャマラン次回作

M.ナイト・シャマランの次回作は『Lady in the Water』とのこと。“マンションの管理人がある日、併設されているプールで海の妖精が泳いでいるところを目撃し…、というファンタジー・スリラー”だそうです。これだけじゃサッパリだなあ。 『パイの物語』(→感…

阿部和重『グランド・フィナーレ』

ロリコン趣味がバレて妻に三行半を叩きつけられ、最愛の娘に近寄ることすら叶わなくなった主人公。彼は娘の誕生日にかこつけてもう一度再会を試みるが……という表題作、他三篇を収録。 この作者の作は初めて読んだのだけど、スルスル読めてしまってあまり印象…

ニュースな本棚:さようなら、ハカセとコミ子

web

こちら*1。トラウマ児童文学特別編枠でついに三田村信行作品が紹介されているのでご紹介。ついでに「三田村信行」のキーワード化も祝いたい。 『おとうさんがいっぱい』が大丈夫だった方にはさらにトラウマ植え付け度の高い『オオカミのゆめぼくのゆめ』をお…

松尾由美『雨恋』

叔母の部屋を借りて住むことになった30歳会社員のぼく。しかし、その部屋には若い女性の幽霊が住み着いていた。姿もなく声だけの彼女に自分の死の真相を探ってほしいと頼まれたぼくは、少し怯えながらも捜査に乗り出すが……というお話。 これは……「しあわせは…

鉄人28号

父を亡くし、母と二人暮しの少年正太郎の前にある日現れた巨大ロボットブラック・オックス。彼は亡き父が遺したロボット「鉄人28号」を操り、ブラック・オックスと戦うよう促されるが、見事に失敗してしまい……というお話。 一番のショックは正太郎君がアンク…

エターナル・サンシャイン

恋人につれない態度を取られて傷心の主人公。しかし何かおかしいので探ってみると、なんと彼女は自分に関する記憶を消してしまったというのだ。ショックを受け、自分も彼女の記憶を消してしまおうとする彼だったが……というお話。 はい、これは“ミステリ系”サ…

ジャック・ケッチャム『老人と犬』

ただ一人の終生の友である愛犬とともに釣りに赴いた老人。しかし、そこへやって来た少年三人組は彼に銃を向け、金がないとわかると突然犬を銃殺。高笑いを響かせた。悲しみと怒りに襲われた老人は制裁を求めて行動を開始するが……というお話。 あれー、おかし…

ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月

前作(→感想)で結ばれたブリジットとマーク。マークと過ごす毎日の幸せを噛み締めていたブリジットだが、その不審な行動に不安が募ってゆく。彼は浮気をしているのでは……?自分から彼をフッてしまうブリジットだが……というお話。 まさに前作の絞りカスと言…

福澤徹三『死小説』

福澤徹三の最新短編集。中年会社員が過ごす鬱々とした日々の中にノイズのように紛れ込む怪異が主人公の心情と足並みを揃えるようにラストで破裂するお話×5を収録。この人の作では中年男性の鬱な日常と古典的な怪談ネタと都市伝説っぽいエッセンスがうまくミ…

西尾維新『新本格魔法少女りすか2』

大魔道士水倉神檎の娘りすかと、彼女を利用して“悪い”魔法使いを狩りにかかる大人びた小学生供犠創貴の活躍を描く短編シリーズ二巻目。えー、盛り上がってまいりました。新キャラ・ツナギの登場と、その仲間入り、そしてさらなる脅威を打ち砕く旅への出発と…

ナショナル・トレジャー

伝説の秘宝を追い続けるゲイツ一族の末裔であるベンは、独立宣言書に宝のありかが記されているという手がかりを得る。だがその際仲間と意見が割れ、宣言書を盗もうとする彼等の先回りをしなければならなくなるが……というお話。 おお、これはよく出来ているの…

パトリシア・ハイスミス『動物好きに捧げる殺人読本』

可愛くて従順な動物達も実の所は人間の手荒な扱いに鬱憤を蓄えていて、それがある日爆発!人間をひょいっと捻り殺してしまいましたとさ、というお話×13が収録された短編集。期待したほど意地悪だったりインモラルだったりはしないのがちょっと残念。とは言え…

ジム・トンプスン『ポップ1280』

人口1280人の田舎町の保安官ニック・コーリーは今日も口うるさい妻や頭の足りない義弟、独占欲の強い愛人や人を見下した仕事仲間などなど、手のかかる連中に頭を悩ませつつ、狡猾な手口で人を陥れ、殺し、そして邪魔者を厄介払いしてゆく……というお話。 これ…

レーシング・ストライプス

引退したサラブレッド調教師に拾われたシマウマのストライプス。小屋の仲間達と楽しく暮らしながら彼は、颯爽と走る競走馬に憧れるが、あるとき自分がサラブレッドとは違うシマウマだと気づいてしまう。おまけに、彼の飼い主はレースに関わりたがらず……とい…

ザ・ロイヤル・テネンバウムズ

テネンバウムズ家の家主ロイヤルは家を出て20年の末遂に破産。末期ガンだと偽り戻って来る。元・天才児の息子達が続々と集まって来たところを見て、彼は同情を引きつつ家族の関係修復を試みる。一方の息子達もそんな中で自らの抱える問題を解決してゆき……と…

ジャック・ケッチャム『隣の家の少女』

主人公が回想する12の夏。隣の家に引っ越して来た美少女メグに彼は心奪われ、仲良くなりたいと願った。だが、隣家では次第に彼女に対する虐待がエスカレートし、彼もそれを止めることはできず……というお話。 これは傑作。こんなにページの空白が痛い小説は初…

オープン・ユア・アイズ

金持ちのボンボンで女たらしの主人公。そんな彼は、自分の誕生日パーティーで素敵な女性と運命的な出会いを果たす。しかし、一晩を彼女の部屋で過ごした後、彼はストーカー女の嫉妬により酷い目に遭わせられ……というお話。 『アザーズ』(→感想)の監督作と…

ロング・エンゲージメント

婚約者が戦場で消息を絶ったと聞いても、彼の生存を信じる主人公。彼女は様々な人に話を聞き、彼の行方についての調査を進めるが、調査は段々と行き詰ってゆき……というお話。 これはもう、物語は横に置いておいて変な画面と妙に雰囲気のある脇役や小道具だけ…

アイ・アム・デビッド

第二次世界大戦後。共産主義体制下のブルガリアの強制収容所で働く少年デビッドは、ある人物の助けを借りて外へと脱走する。海を越え、山を越え、受けたアドバイス通りに一路デンマークを目指す彼の前には何度も困難が立ちはだかるが……というお話。 つまんね…

黒武洋『そして粛清の扉を』

ある高校の卒業式前日、地味で気弱な中年女性教師が突然生徒を人質に教室に立てこもった。驚くべき戦闘力と戦術で生徒を一人ずつ亡き者にしてゆく彼女に、警視庁の特警班は果敢に立ち向かうが……というお話。 日頃虐げられている中年女性がムカつくガキどもを…

素晴らしき哉、人生!

町から出て世界を回りたいという夢を持つジョージはしかし、その人のよさからチャンスを逃してばかり。不運なアクシデントで金策が尽きたクリスマス・イブ、彼は身投げを図るが、そこに彼を生かす命を帯びた翼のない天使クラレンスがやって来て、彼に「ジョ…

パトリシア・ハイスミス『ガラスの独房』

無実の罪で投獄されることになった建築技師カーターは、同室の囚人とのトラブルの末看守による虐待を受け、親指に重傷を負った痛みをまぎらわそうとモルヒネ中毒になりかけ、おまけに面会に来た知人からは妻と弁護士が不倫の関係にあるとほのめかされて……と…

カナリア

カルト教団“ニルヴァーナ”に親子で入信していた少年、光一。しかし、教団が無差別テロを起こし崩壊した後、母は姿を消し、妹は祖父に引き取られ、自分は児童相談所に預けられてしまう。彼は妹を取り返そうと施設を脱走し、偶然であった少女由希とともに東京…

フレディVSジェイソン

人々に忘れられ、夢の世界で人殺しを楽しめなくなったフレディはイラつくが、ジェイソンを利用して人々を恐怖させ、力を取り戻そうと画策する。一方、母親が死んで以来元気がない高校生ロリーは、友達の家に泊まったその夜、とても恐ろしい出来事に遭遇し………

マーガレット・マーヒー『空中の王国――九つの愛の物語』

タイトル通り九編を収録した児童向け短編集。収録作は寂しげに綺麗なタイプのお話かもしくはナンセンス寄りのお話、どちらにしてもファンタジックながら、「生まれてから一度も空中ブランコを降りたことのない少女」みたいな唐突な設定があまり陰りも無く語…

或る夜の出来事

資産家の娘エリーは結婚に反対する父の手から逃れてニューヨークへ。そこで乗ったバスに偶然乗り合わせた新聞記者ピーターは彼女を気に入るが、彼女が今話題の逃げた令嬢だと気づき……というお話。 元祖スクリューボール・コメディということで、さすがにロマ…

高里椎奈『雪下に咲いた日輪と』

一人の少女から依頼を受ける秋達。彼女の父が家族の反対を押し切って断崖絶壁に立つ洋館を買い、そこで暮らそうとしているというのだ。しかも、彼女はその館で奇妙な出来事を体験したという。購入を踏み止まらせるため、彼女とともに館のお披露目会に参加し…

中島望『地獄変』

『十四歳、ルシフェル』のその後、サイボーグのルシフェルこと源正義は山鹿百合子の元に身を寄せ、彼女のボディガードとして暮らしていた。一方、地獄絵図を描くために実際に地獄のような風景を出現させる計画を進める暴力団総長十束はルシフェルに目を付け…