マーガレット・マーヒー『空中の王国――九つの愛の物語』

タイトル通り九編を収録した児童向け短編集。収録作は寂しげに綺麗なタイプのお話かもしくはナンセンス寄りのお話、どちらにしてもファンタジックながら、「生まれてから一度も空中ブランコを降りたことのない少女」みたいな唐突な設定があまり陰りも無く語られてしまうあたりそれほど好みではないかも。
集中気に入ったのは、田舎の主婦が作ったケーキに芸術的価値が認められてアホみたいな言説が飛び交う「芸術作品」、様々な世界へと旅立てる魔法使いの窓の中から少女が選んだのは……っては「魔法使いの窓」あたり。前者は下手にブラックな話にしてないあたり好感が持てるし、後者はささやかなハッピーエンドがとても嬉しい。「星の世界から吹く風」の恐ろしくも美しいラストも悪くない。