黒武洋『そして粛清の扉を』

ある高校の卒業式前日、地味で気弱な中年女性教師が突然生徒を人質に教室に立てこもった。驚くべき戦闘力と戦術で生徒を一人ずつ亡き者にしてゆく彼女に、警視庁の特警班は果敢に立ち向かうが……というお話。
日頃虐げられている中年女性がムカつくガキどもをまとめてブチ殺す、というわけで、これはもう、ただ「痛快」な小説である、ということでいいんじゃないかと。読んでて気まずさを覚えないよう殺される高校生達は意図的に人間としての奥行きを排除されているし、一応フォローとして申し訳程度に殺戮の正当性へ疑問を持つ視点も用意してあるってな按配で、これだけお膳立てが揃ってるんだから「痛快」以外に何を思えと?ってなもんです。
隠し味としてはミステリ要素もなかなか美味であって、犯人側が持っているあるアドバンテージを終盤までうまーく隠したまま話を進めた手さばきは評価したい。あと、ハードカバー版で話題になったウザったい漢字表記と算数字表記は、この文庫版ではいくらか手が入れられているようです。