パトリシア・ハイスミス『動物好きに捧げる殺人読本』

可愛くて従順な動物達も実の所は人間の手荒な扱いに鬱憤を蓄えていて、それがある日爆発!人間をひょいっと捻り殺してしまいましたとさ、というお話×13が収録された短編集。期待したほど意地悪だったりインモラルだったりはしないのがちょっと残念。とは言え、動物を巡る騒動にかこつけて人間のイヤーな心理を描いた作品には面白いの多し。
というわけで集中の個人的ベストは、完璧に機会制御された不気味な養鶏場を舞台に不吉な出来事が連鎖し、遂には爆発する様がなんとも迫力たっぷりな「総決算の日」、禁煙とハムスター増殖とで頭のネジが外れちゃったお父さんの暴挙が恐ろしい「ハムスター対ウェブスター」あたり。他、ネズミがやたらとハードボイルドな「ヴェニスでいちばん勇敢な鼠」、怪力馬と仔猫の心の交流が胸キュンな「機関車馬」なんかもイイ。ちなみに仔猫がバンバン殺される本なので猫好きはショックに注意。