阿部和重『グランド・フィナーレ』

ロリコン趣味がバレて妻に三行半を叩きつけられ、最愛の娘に近寄ることすら叶わなくなった主人公。彼は娘の誕生日にかこつけてもう一度再会を試みるが……という表題作、他三篇を収録。
この作者の作は初めて読んだのだけど、スルスル読めてしまってあまり印象に残らないのにびっくり。世間一般から逸脱したような人ばっかり出て来るわりに、そんな彼等の思いがすれ違いすぎていて衝突とか化学反応が起こらなくってなんとも静か。だいたいロリコン男を主人公に据えてるくせに、少女がちっともエロチックに描写されないあたりからしてお話に近づきにくいったらないのだけど、そのへんの感じを味わえってことなんだろうなあ。だから、集中で唯一非日常への扉が顔を覗かせる「馬小屋の乙女」にはなんだか違和感を感じてしまったりもして。
押し付けがましくないのはいいのだけど、どうにも引き付けられるものがないなあ、ということでひとつ。