高里椎奈『雪下に咲いた日輪と』

一人の少女から依頼を受ける秋達。彼女の父が家族の反対を押し切って断崖絶壁に立つ洋館を買い、そこで暮らそうとしているというのだ。しかも、彼女はその館で奇妙な出来事を体験したという。購入を踏み止まらせるため、彼女とともに館のお披露目会に参加した秋達だったが……。
薬屋探偵妖綺談シリーズももう12作目。今回はなんと、“雪の山荘”モノですよ。いわくつきの館に道崩れに見立て殺人、とお約束の小道具が揃ってるのに全然ワクワクしないのは、それらがぎこちなく、愛着もなさそうに配置されているから。解決編での種明かしの下手さも含めて、相変わらずミステリとしては微妙です。
とは言え、シリーズ的に今作の主眼は、高遠さんの大人気ないファザーコンプレックスとの戦いを物語の真ん中に置くことと、秋が「何をしているか」を初めて仄めかすことにあるので、もはや固定ファンしか読んでないこのシリーズの第12弾としては問題ないでしょう。実際、高遠さんと高遠父のやり取りはいつも以上に楽しめたし。そうそう、それに今回は高遠さんに近しいある人物の初登場も拝めます。これはなかなか強烈。