米村圭伍『退屈姫君 海を渡る』

風見藩三部作も完結ということで、こちらは第二作『退屈姫君伝』の続編という扱い。どうやらこの形でシリーズ化するようだけれど、だんだんユルくなってるし、数馬と一八の扱いは小さいしで、そろそろシリーズ追っかけを中断してもいいかな、と思い始めてい…

道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

戯画的にグロテスクに歪んだ子ども世界を舞台にしたミステリってことで、『神様ゲーム』と並び称されてるのもなるほどという感じ。どちらかと言えばこちらのほうが好き。終盤の展開では新型サイコパスが旧型に引導を渡す図が見えて、おお、決まった!と思っ…

津原泰水『赤い竪琴』

直球のラブストーリーで驚き。筋立てだけなら昨今流行の純愛ものとそんなに違わないですよ。そういう類のものを念頭に置いて、パロディ的に書いたんだろうか。とまあそんなことはどうでもいいのだけど、とりあえずあまり面白くなかった。主人公二人の気持ち…

米村圭伍『面影小町伝』

『風流冷飯伝』『退屈姫君伝』に続く三部作の完結編。なのだけど、基本的に呑気な話だった前二作と比べて雰囲気はえらくシリアス。ですます調の軽い文体も無し。『退屈姫君伝』では愉快な仲間達の一員だったお仙が美女に成長して主役を張り、自らの数奇な運…

輪廻

今年の一発目はこれ。いやもう清水崇好き好き。伽椰子さんや俊雄君が出て来なくても、こんなに怖くて面白い。大概、終盤に意外な展開があるホラーは真相が明かされた途端に弛緩するものだけれど、これはサスペンスが途切れても緊張が途切れてくれない。三つ…

ベン・ライス『ポビーとディンガン』

妹のために奮闘するお兄ちゃんは好物ですが、このお話の主人公アシュモル君はいまいち。この役割に必要なツンデレ度が圧倒的に足りないんだもの。そしてそれはアシュモル君だけじゃなくて村人全員に言える。みんな意外にすんなりポビーとディンガンの存在を…

吉村萬壱『バースト・ゾーン―爆裂地区―』

なんて素敵なディストピア。得体の知れない怪物の群れが通りすぎた後に残ったのは、「意味を志向しすぎる人間も、しなさすぎる人間も、どっちにしろ醜い」というような。そんな笑える事実でしたよ。戯画的なのに生々しく、グロいのに臭みが無い描写の積み重…

ニュースの天才

この映画の見物は何と言っても、当代きってのフェロモン大量分泌俳優二人ががっぷり四つに組んでぶつかり合う演技対決にある!としたい。捏造記事の責任から逃げまくるヘイデン・クリステンセン。ひたすら誠実に彼を追及するピーター・サースガード。嘘に言…

2005映画ベスト10

年が明けたので選出してみました。2005年に公開及びビデオスルーされた作品が対象です。好き映画→1.『宇宙戦争』、2.『エターナル・サンシャイン』、3.『ナショナル・トレジャー』、4.『蝋人形の館』、5.『カンフーハッスル』、6.『愛についてのキンゼイ・レ…

米村圭伍『退屈姫君伝』

『風流冷飯伝』の続編。と言っても、舞台設定が同じなだけ(今回の主人公は風見藩に輿入れした姫君)で主要登場人物は総とっかえされておりまして、前作を読んだ人ならクスリとできる箇所がいくつかある、という程度。あ、ただ一人前作から続投のお庭番、倉…

イン・グッド・カンパニー

恐ろしく地味なコメディでした。『アメリカン・パイ』とも『アバウト・ア・ボーイ』とも全然違う作風を一応成功させていて、これでワイツ兄弟の職人的な監督としての才能がはっきりした感じ。コメディならなんでも出来るんだろうな。51歳の部下と26歳の上司…

ガール・ネクスト・ドア

エリシャ・カスバート演じる「元AV女優のエッチなお姉さん」の奔放な魅力で引っ張る序盤はなかなか楽しい。でも途中からこのお姉さんがあまりに主人公に都合のいいキャラクターになってしまって魅力激減。そうなるともうどこにも興味が抱けなくなった。安易…

米村圭伍『風流冷飯伝』

新刊読むのに疲れたので読んでみました。面白い! ですます調の柔らかい文体がすごくキャッチーで読みやすく、加えて主役格の二人、幇間の一八と冷飯食い*1の数馬のキャラがしっかり立っているのでどんどん引き込まれる。どかーんと盛り上がるクライマックス…

柾悟郎『さまよえる天使』

えー、この作家のことは僕は全然知らないんですが、面白かったです。<静物の人>と呼ばれる、普通の人間の300分の1の速さで生きる者達と関わった人々のお話×6。短編の一編一編の独立した面白さは実はそれほどでもないのだけど、通して読むと、奇妙で穏やか…

恋のミニスカ ウエポン

レズビアン要素入り低予算版チャーリーズ・エンジェル。なんだけど、これはかなり強力ですよ。オンナノコ映画としては本家より上。スパイ学園に集った個性バラバラな女の子達が生き生きとぶつかり合うだけで俄然楽しくなってくるし、女の子同士の友情と恋愛…

アイドルとデートする方法

純情可憐な主人公が懸想する人気男性アイドルと、そんな主人公を見守る幼馴染み。どちらが恋のバトルに勝つかは分かり切っているこの種の映画のポイントは一つ。負ける方をいかにスマートに退場させるか、ということです。実際、この映画のライバル退場の図…

俺たちニュースキャスター

隅々まで弛緩し切ったコメディ。なんだけど、かなり笑えてしまった自分に愕然。出演者が内輪で楽しそうにしてるのが決して不快感に繋がらず、逆に微笑ましさを感じてしまう種類の映画でした。主人公とヒロインがベッドで合体!した途端に、二人がCGの雲を笑…

最後の恋のはじめ方

かなりよく出来たロマンティック・コメディ。主演のウィル・スミスを十分に優遇しつつも俺様映画臭を周到に排除してあって、気持ちよく見られる。プレイボーイを気取ってもナード時代の恋の傷を振り切れない主人公と、主人公が手助けする現在進行形でナード…

ハービー/機械じかけのキューピッド

いまいち詰めの甘い脚本で、どうにも盛り上がらず。主人公(と父親)がかつての事故で負ったトラウマをきちんと描いてくれないと、終盤の展開が死んでしまうじゃないか。無駄に多いキャラはあまり描き分けられてないし(ライバルの腰巾着は一人でよし。その…

ライフ・アクアティック

前作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』でも感じたある種の嫌らしさ(作り込まれすぎててどこにも入れない!)が今回は最後まで消えてくれなくて、ダメでした。最終的に暖かい家族の繋がりが見えた前作と違って、今作の人間達はヌルーく傷を舐め合ってるよう…

ステップフォード・ワイフ

原作のオチをもう二ひねりくらいした皮肉なアレンジが効いてる。そりゃまあ女の妄執は男の妄執なんかよりずっとタチが悪いものね。こうなるのもむべなるかな。愉快愉快。ただしラストシーン(テレビ出演のとこ)は蛇足だ。あれでガックリきた。あと、ゲイ夫…

13 LOVE 30

すごく面白いんだけど、これは……。「時が経つと間違いは正せなくなる」というテーマを前面に押し出そうとするあまり、やたらと後ろ向きなハッピーエンドになってしまいました。 おそらく意図するところはマーク・ラファロがメイキングで言っている通り「反ラ…

VOW nano!

VOWの携帯サイトに投稿されたネタを中心に収録。そのせいなのかどうか、以前に載ったネタのダブり掲載も多いです。「ソフトクムーリ」なんて基本じゃん。僕はと言えば毎度のことながらおかしな日本語ネタが気に入りましたよ。「ガラスがこされる」とか。あと…

ディック&ジェーン 復讐は最高!

これは『ラットレース』みたいな、いまいち笑いが弾けないヌルいコメディの最後にちょっと“感動的”なオチを付けてお茶を濁す、というタイプの映画ですね。そんなことじゃ誤魔化されないぞ、と思った。まあとにかくつまらんです。 唯一の見所はティア・レオー…

アメリカン・パイ in バンド合宿

アメパイシリーズ番外編。本シリーズと違って学園階級間恋愛及び学園階級間友情の成立にあまり爽快感がないところがつまらないのだけど、一貫したベタッとした甘さで一本の映画としてはまとまってるかな。最初はスティフラーの弟(今回の主役)が何故こんな…

スケルトン・キー

これ、オチは悪くないんだけど、そこに至るまでの過程が全然盛り上がらないのは、不気味な館の雰囲気に追い詰められてゆく主人公にマゾっ気が足りないせいでしょう。ケイト・ハドソンじゃ骨太すぎる。余命幾ばくも無い老人に父の面影を重ねて過剰に思い入れ…

綴り字のシーズン

驚いたことにそこそこ原作*1に忠実でした。絶対にやらないだろうと思っていた、主人公の少女が宗教的高揚に達して床に倒れ伏し、全身をビクビク痙攣させるシーンまでやっていたのにはびっくり。他にも、母親の「万華鏡の部屋」内部の様子だの、少女が見るビ…

久住四季『トリックスターズ』

なんとも雑で困った。SF(と言うか、この場合はファンタジーなんだが)ミステリは最低限特殊設定のルールを明確にしてくれないとどうにもならないですよー。キャラクターがペラッペラに薄いのは終盤の鬱展開を際立たせるためにわざとやってるんだろうなー、…

チキン・リトル

プロローグが猛烈にダメでどん引きしたものの、終わってみるとそんなに悪くなかった。最近のディズニーアニメでは出来がいいほうでしょう。いまいち立体感に乏しいCGキャラ*1と未整理な脚本に囲まれながらもボイスキャストの皆さんが頑張って頑張って、それ…

遠藤徹『弁頭屋』

『姉飼』は未読なので、この作家の本を読むのは初めて。日常の中にシュールでグロテスクなモノが当然のような顔をして紛れ込んでいる、という作風なのかなあ、そういうのは好きだ。と思って一冊読み通してみると、そういう収録作ばかりでもなかった。という…