米村圭伍『面影小町伝』

『風流冷飯伝』『退屈姫君伝』に続く三部作の完結編。なのだけど、基本的に呑気な話だった前二作と比べて雰囲気はえらくシリアス。ですます調の軽い文体も無し。『退屈姫君伝』では愉快な仲間達の一員だったお仙が美女に成長して主役を張り、自らの数奇な運命を知る展開は面白いけれど、何分その“数奇な運命”がシリアスに描かれすぎて大団円に辿り着けないのがシリーズのファンとしては不満かな。史実を絡ませたストーリーや、伝奇チックなバトルの描写は好き。
幕府のお庭番、倉知政之助は今作でも出張っていて、ちっともバトルに貢献しないあたりやはり微笑ましい。何気に唯一のシリーズ皆勤キャラなわけで、愛されてるんだろうあ。