フアン・ボニージャ『パズルの迷宮』

元々えらい長かったペーパーバック版をこの映画*1の原作用に短く縮めたもの、を沢村凛が翻訳したもの。わりとバカミスを期待して読んだものの、主人公のねちねちと曲がりくねる思考をなぞった叙述が霞となってかぶさって、作品内で何が起こってるんだかよく…

ガールズ・ルール! 100%おんなのこ主義

いくつかバランスを崩しているところもあるのだけど、女の子だけで何かを成し得るってことの素晴らしさを希望をもって描いていて素敵。各々の心の問題を乗り越えてきちんと男の子と対峙して、それでいて男の闖入ごときで崩れないホンモノの友情を保つ主役の…

ミュンヘン

主人公たる暗殺チームが最初に勢ぞろいした瞬間からちゃんとチーム然として見えるのが良かった。見た目のキャラ配分もちょうどいいんじゃないかと思う。で、彼等が素人臭くビビりながら暗殺をこなしていく序盤はかなり面白くて、一般人を巻き込んじゃって精…

オアシス

韓国製、前科三犯のノータリンと重度の脳性麻痺を患う女のラブストーリー。次第に心を通わせていくこの二人のささやかな触れ合いは、微笑ましいと言うにはあまりに痛々しく、おまけに破綻の予感をふんだんに含んでるんだが、それでも恐ろしく幸せそうで泣け…

恋の骨折り損

シェイクスピアの原作を脳天気に翻案したミュージカル。映画館で観てればも少し面白かったかと思うのだけど、歌と踊りの素人の群れが不器用に舞うのを見せられても全然楽しくならない。踊り終わった後、露骨に「やれやれ、疲れたわ」という姿勢になる人がい…

単騎、千里を走る。

高倉健の不器用さが言葉の壁を越えて人の心を動かしてゆく様がなかなか感動的。携帯電話を通じて通訳してもらったりするもどかしい展開はほとんどコメディみたいで面白い。特にビデオレター(?)のシーンはすごかった。言葉が通じないゆえに気持ちが通じて…

ジェリー・スピネッリ『スターガール』

閉鎖的でいじけてて、異分子はすぐに排除されちゃう田舎の高校を力強く生き抜いた一人の変わり者の女の子のお話。主人公スターガールがそれほど魅力的だとも思わないんだが、彼女の空気を読まないキャラが周りを熱狂させ、困惑させ、遂にはイラつかせるに至…

フライトプラン

最初に言っておくと、『フォーガットン』よりは面白かったよ? ミステリ部分はヘボいけれど、主人公ジョディ・フォスターのハッスルぶりに寄り添った演出が良くも悪くもスリリング。このアブナい女は次はどんな傍迷惑な行動に出るんだろう?という興味が持続…

悪魔の棲む家

マイケル・ベイ等が製作する古典ホラーリメイクシリーズ第2弾、なんですけど、前回の『テキサス・チェーンソー』に比べて段違いに盛り上がっていないようだ。それはたぶんオリジナル版の人気が高くないせいなんだけど、実際観てみたらその不遇な境遇を可哀想…

霞流一『サル知恵の輪』

ときどき、ふと読みたくなる霞本。こちらは最新刊。今回はどうもバカミス力*1が弱くっていまいち。見立て殺人の本当の意図にしても、馬鹿馬鹿しいというよりはむしろ「勉強になるなあ」なんて思わされてしまうし、騙りのトリックも無茶なだけという感じ。長…

海堂尊『チーム・バチスタの栄光』

第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。選考委員の興奮ぶりに違わぬ傑作でした。バチスタ手術の名チームの微妙にぎくしゃくした関係が、対照的な二人による二度の聞き込みによって次第に見えて来る構成がまず面白いし、術中死やクライマックスの犯人…

鯨統一郎『パラドックス学園』

推理小説が存在しない代わりに推理小説みたいな事件が日常的に起こる世界で、そこへ迷い込んだ推理小説マニアが“推理小説のお約束”だけを頼りに密室殺人をスパッと解決! と来れば結構面白そうなんだけど、もちろん鯨なのでこの趣向は全く徹底されていません…

森博嗣『レタス・フライ』

近頃は買わずに人に借りて読んでる森の本。最近の例に漏れず、恐ろしく力の抜けた短編集でした。睦子叔母様好きなので「刀之津診療所の怪」が部分的に面白かった、というくらい。読者を十分に焦らしつつシリーズのサイドストーリーを語るのが巧いというのは…

奥田英朗『空中ブランコ』

『イン・ザ・プール』は未読で、いきなりこっちから読んでみました。どうにも不安定になっちゃった人達が、幼児みたいに悪戯っぽい太っちょ精神科医伊良部に振り回されるうちに自分の問題に気付き、治ってゆくこの過程が実に爽やか。最初はどこか嫌な奴とし…

THE 有頂天ホテル

あまり大げさなことが起こらないわりにきっちりハッピーで愉快で、よろしいんじゃないでしょうか。特に、意外なカップルの誕生という展開を捨てたところが潔いと思う。香取慎吾絡みのエピソードはもう少しさり気ないほうが好みだけど。伏線の張り方にも茶目…

横山秀夫『震度0』

なんだこのオチは。県警重要人物の失踪事件にあたって、自己保身とより良い天下り先の確保“だけ”を考えて奔走する幹部達の俗物っぷりが読み所なんだが、最後の最後に性善説的なオチがついて全部台無し。そもそも、刻々と変化する幹部達の対立の構図に情報戦…

2005本ベスト10

また機会を逸しそうなのでこのへんで選出。2005年に刊行された小説本が対象です。ちなみに映画のベストはこちら*1。国内小説→1.鳥飼否宇『痙攣的 モンド氏の逆説』、2.浦賀和宏『松浦純菜の静かな世界』、3.池上永一『シャングリ・ラ』、4.吉村萬壱『バース…

復讐者に憐れみを

パク・チャヌクの復讐三部作一作目。『オールド・ボーイ』と『親切なクムジャさん』は観たので、これにてコンプリートということで。セリフもBGMも極少の静かな映画なのだけど、徐々に例の過剰な演出が混ざって来るのが楽しい。肉親の死体解剖を泣きながら見…

わたしが美しくなった100の秘密

モキュメンタリー形式でアメリカ田舎町のミスコン予選の模様を追うブラック・コメディ。ブラックな笑いが結構予想範囲内に収まっちゃう感じだなあ、と思ってたらだんだんとエスカレートしていって、州大会と全国大会の顛末にはさすがに笑った。吹き抜けに降…

ポリーmy love

ヌルめのロマンティック・コメディ。せっかく主人公にベン・スティラー、ヒロインにジェニファー・アニストンを押さえておきながら、スティラーの振り回され方が足りないのは勿体無さすぎる。スティラーが一人で勝手に暴走してるように見えるから、ギャグも…

羽純未雪『碧き旋律の流れし夜に』

例の島田大先生推薦作。舞台となる館の構造も主人公一族の血縁関係もゴチャゴチャしててよくわからん。ミステリにだけ許される必殺技、屋敷見取り図と家系図を付けちゃえば良かったのに。島田先生推薦なんだから当然……ということで、トリックにも意外性なし…

プライドと偏見

まず映像が綺麗。ファーストカットやクライマックスの告白シーンに代表されるように、差して来る光の撮り方が巧いな。屋敷や舞踏会会場の中をグルグル駆けずり回ってその騒がしい雰囲気を伝えるカメラも良し。そして主演の二人の相性がこれまたいいんですよ…

プルーフ・オブ・マイ・ライフ

天才数学者だった父がガイキチとして死に、精神が不安定の極みにある主人公のその不安定さをそのまんま表したような、時制やら何やの錯綜した前半部は結構期待できそうで、ヒステリックにわめき立てるグウィネス・パルトロウの演技もいい感じ、だったんだが……

荒山徹『柳生薔薇剣』

荒山徹の本は初めて。評判通り、面白かったですよ。まずヒロインの女剣士柳生矩香(十兵衛の姉!)の貫禄溢れる立ち居振る舞いがカッコいいし、最後の決闘の脇で妖術師同士が対決してるような怪しげな要素の混じり方も愉快だ。矩香様がカッコよく男どもを薙…

ショーン・オブ・ザ・デッド

ゾンビものパロディ映画。ゾンビが街に溢れようとなかなか侵されないダメ日常の強固さに微笑ませていただいたけど、まだまだ足りない。このネタならもっと面白くなるんじゃないかなあ。「あの人が死ぬ場面はギャグにしたのに、この人のはしないんだ……」とい…

稀人

清水崇映画潰し。あとは『富江re-birth』を見ておけばいいかな。それはさておき、この映画はあまり面白くなかった。展開がフラフラして本筋が見えにくいんだもの。別に“わからない”映画でもいいんだけど、これは無駄にわかりにくくなってるんじゃないかと思…

スカーレット・ヨハンソンの 百点満点大作戦

身も蓋もない邦題がついてますが、確かにヨハンソンのお宝映像的な見方もできそう。トリニティの格好をして『マトリックス』のパロディをやるという超絶安っぽシーンまであった。それはともかく、映画自体もわりあい面白くて、普段全く接点のない同級生6人が…

ニック・マクダネル『トゥエルヴ』

ある事件が発生するそのときまでの4日間を関係者の群像劇という形で描く、というもの。えー、これはですね、作者がアーヴィン・ウェルシュだったらさぞ面白かっただろうなあ、という感じ。自分しか見えてない頭の悪い登場人物を見てるこちらが悲しくなるよう…

米村圭伍『退屈姫君 恋に燃える』

シリーズ最新巻。やっと追いついた。前巻『海を渡る』より話が大げさになってなくて、これくらいがちょうどよく面白い。次第に微増しつつある下品ネタの気の抜け方もいい感じ。諏訪と小文五の“遅れて来た発情期”カップルが所構わずイチャつくのが好きだ。歌…

ポビーとディンガン

妹のために健気に頑張るアシュモル君の、自転車を漕ぐ姿がすごく綺麗に撮られていて好き。どんなに不安そうな顔をしててもその姿には希望が満ちていて、この監督お得意の「負け犬の町」の精神的復興みたいなテーマにもぴったり。ただ、そういうテーマも扱う…