復讐者に憐れみを

パク・チャヌクの復讐三部作一作目。『オールド・ボーイ』と『親切なクムジャさん』は観たので、これにてコンプリートということで。セリフもBGMも極少の静かな映画なのだけど、徐々に例の過剰な演出が混ざって来るのが楽しい。肉親の死体解剖を泣きながら見守るソン・ガンホを、グチュッとかギーコギーコとかいうリアルな効果音とともに見せるだなんて、相変わらずの意地悪だなあ。
ただ、同じ一つの悲劇が生んだもう一人の復讐者、シン・ハギュンのほうの苦しめ方が足りないせいでテーマがぼやけてる感じがする。この人の聴覚障害こそが悲劇を引き起こした、というところをもっと強調すべきでは。哀切が単なる憐れみに取って代わられる滑稽なラストは好きだけど。
ガンホは貫禄の名演技。セリフと表情をほぼ封じられた中で極限まで悲しんでみせるハギュンもなかなか。演出に演技を殺されてる感が若干あるが。ヒロインのペ・ドゥナはメイキングで見てると撮影中しょっちゅうマジ泣きしていたようで。お疲れ様でした。彼女のお小水が床を伝ってくるシーンは前述の死体解剖シーンの次に好き。