奥田英朗『空中ブランコ』

イン・ザ・プール』は未読で、いきなりこっちから読んでみました。どうにも不安定になっちゃった人達が、幼児みたいに悪戯っぽい太っちょ精神科医伊良部に振り回されるうちに自分の問題に気付き、治ってゆくこの過程が実に爽やか。最初はどこか嫌な奴として読者の前に登場する患者達のカドが次第に取れてゆくのを見守るのは楽しいなあ。伊良部がそれらしいアドバイスを全くしないせいか、説教臭くないのがいいですね。
集中のベストは「女流作家」かな。これは最初本当に主人公が嫌な女にしか見えないんだが、ちょっとしたことを通して彼女のいい面がどんどん透けて来るこの爽快感。伊良部の注射シーンも最初は唐突に感じたけど、何度も繰り返すと天丼ギャグみたいで笑えてくるもんだと思った。