2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

森博嗣『τになるまで待って』

森っぽい部分を全部無視して読めばなかなか程度のいいバカミスだと思いました。いや、あのトリックは笑うだろ。舞台設定で気を持たせておいてあんな……。今後こういうタイプのミステリを量産してくれるなら森を読み続けるのも悪くない、とちょっと思えた。 あ…

桜坂洋『All You Need Is Kill』

初年兵が戦死を通して延々ループ、という設定が、辻褄合ってるのかどうかわからなくなるくらいまで発展してゆくのは、SFミステリ的で面白い。この設定を巧く活かした戦場のボーイ・ミーツ・ガールな展開も最初はいい感じ。でもなんだかどちらの要素も主人公…

フォー・ウェディング

群像劇としては悪くない微笑ましさを感じるし、四度もの結婚式(と、一度の葬式)を経る中で何組か応援したくなるようなカップルもあったのだけど、肝心の主人公カップル成立に納得がいかない。結局主人公がラストまで責任を逃れ続けているように見えるのが…

誘惑の接吻

1960年代、アメリカ西部の田舎町を舞台にしたもやしっ子少年のしょっぱくも微笑ましい青春の日々。ちょっとタチの悪い意味で純情な主人公とヒロイン、それを取り巻く人々がどうにも噛み合わず、気まずい場面の連続になる前半は笑えるし、やるせなくて、とて…

西尾維新『ニンギョウがニンギョウ』

例のやつ。あの読者サービスの塊こと西尾維新がこんな、誰にも求められていないような小説を書くとはびっくりなんだけど、そんなに悪くもないですね。特に面白くもないんだけど。 お話は二十三人の妹を持つ「私」のシュールな日常、という感じで、それほど無…

フィアレス

飛行機墜落事故のショックで逆に“平常心”が行き過ぎた状態になってしまった男のお話。もうちょっとコメディっぽいのかと思ったらかなり落ち着いた語り口で、主人公の理解不能な行動とも相まって何やらすごく不穏な雰囲気。しかもそれが延々持続するのでつい…

中島望『宇宙捕鯨船バッカス』

霧舎学園の新刊が出てこの本が出てるんだから、今月という月は素晴らしい。とりあえず、この作者の本がこの表紙*1というだけでもうお腹いっぱい。 でもどうせ中身はいつも通りなんだろ、との心を抱きながら読んでみると、確かに主人公のDQNっぷりとか人外の…

赤木かん子編『SFセレクション5 地球最後の日』

児童向けSFアンソロジー。このシリーズって図書館流通のみかと思ってたら普通に売ってるんですね。未成年さん(id:LOVE800)のところを見てて気づきました。ありがとう。いずれ全巻買い揃えたい。 いきなりこの巻を買ったのは「The End of the World」に「お…

ボビー・フィッシャーを探して

チェスの天才少年のお話。ものすごくよく出来ていて、思わず画面に釘付け。チェスってこんなに迫力のある競技だったのか!と思わせるほど画面に臨場感があって、その臨場感がそのまま主人公の少年の心情を表しているというさり気ない巧さ。少年が久々にホー…

ジョージ・R・R・マーティン『タフの方舟2 天の果実』

二巻目。<鋼鉄のウィドウ>ことトリー・ミューン姐さんがタフを向こうに回してかなり腰が引けながらも大活躍。と思ったらオチに至ってシリアス度がぐんと増してくれて、タフの“底”が一瞬だけ垣間見えた。この幕引きには文句が付けがたい。 トリー姐さんもの…

霧舎巧『九月は謎×謎修学旅行で暗号解読 私立霧舎学園ミステリ白書』(背景色でのネタバレ含)

みなさん、遂に霧舎がやりましたよ。これは面白い! ああ、今までの道のりを思うと涙が止まらない……。 とにかくいろいろ上手くいっている。ツイン探偵システムが初めて有効に機能しているし、ウザったいラブコメ要素がいつもよりかなり控えめ。そして何と言…

ジョージ・R・R・マーティン『タフの方舟1 禍つ星』

あらゆる生物の胚を積んだ<方舟>で銀河を駆ける異形の商人タフが、あちこちの星で問題の解決を依頼されては引っ掻き回す連作短編集。とにかく方舟を取り巻くヘンな生き物達にヨダレだらだら。歩く蜘蛛の巣って何よ。地獄の仔猫って。巨大海洋生物達(特に…

令丈ヒロ子『若おかみは小学生!』

id:mustaphaさんの感想を見て読んでみた児童書。確かによく出来てる。短い分量の中に過不足無くイベントを盛り込んで全てのキャラクターに見せ場を与えた上に、次巻への引きもばっちり。一度失敗を経た主人公の少女の努力が例外なく報われてしまうせいか、そ…

アダム・ジョンソン『トラウマ・プレート』

自分や周りがどうにも病んじゃってる人達がそれでも人間らしくふらふらさ迷ってしまうお話×9の短編集。僕が気に入ったのは「ティーン・スナイパー」や「死の衛星カッシーニ」あたりのボーイ・ミーツ・ガールもの。特に「死の衛星カッシーニ」のラストシーン…

今野緒雪『マリア様がみてる ロサ・カニーナ』

また白薔薇さまか。ちょっと出張りすぎでは。好きだけど。「ロサ・カニーナ」はドロドロするのかなーと思ったら爽やかにオチていい話。蟹名静さんの凛とした態度と白薔薇さまの包容力がよし。志摩子さんもいい具合に動いてる。 「長き夜の」は宝船という小道…

今野緒雪『マリア様がみてる いばらの森』

例によってドタバタやってる「いばらの森」の後にストレートに百合な「白き花びら」を置くという抱き合わせが巧く出来てる。シリーズ中このタイミングでこのエピソードを出したというタイミングもいい。 白薔薇さまのキャラに深みが増したのは喜ばしいのだけ…

今野緒雪『マリア様がみてる 黄薔薇革命』

読後の印象はどちらかというと、黄薔薇姉妹のところの益体もない痴話喧嘩に付き合わされてげんなり、というのに近い。由乃さんと令さまの絡みはわりとどうでもいいです。 一応黄薔薇編なのにキャラが立つに至らない黄薔薇さまが可哀想と言うか。

Be cool

いろいろキツかった。トラヴォルタもユマ・サーマンもハーヴェイ・カイテルも。なんでこんな落ち目の俳優とゲスト出演者の見本市みたいなことになってるんだろう。どっちの枠にも入れないロック様はかなりヒドい扱いで、でも観ているうちにあまり違和感が感…

日日日『ちーちゃんは悠久の向こう』

この作家については周辺の盛り上がってるんだか盛り上がってないんだかよくわからん状況が面白いなあ、と思っていて、それだけでよかった気もするだけど今回1冊読んでみました。文体は中途半端に西尾維新だし、物語を進行させるためだけに出てくるサブキャラ…

米澤穂信『犬はどこだ』

なるほど。これは確かによく出来てる。このミス1位でも驚かないぞ。人探しと古文書の解読、二つの事件の捜査がスムーズすぎず気を持たせすぎず、ついでにシンクロもしすぎないのが読んでて心地いい。と思ってたらその穏やかテンポがオチを効果的にしてもいる…

谷川流『涼宮ハルヒの陰謀』

特に何も起こりませんでした。なんだか知らないうちにキョンが団員としての使命感を一段と強くしたくらいかな。ここが「なんだか知らないうちに」なんていう風に見えてしまうのがこの巻の上手くいってないところ。新キャラ登場もあまり印象に残らず。 面白か…

歌野晶午『女王様と私』(背景色でのネタバレ含)

すっげ。こんなに捩れまくるストーリー久しぶり。アイデア的には過去作のアレの応用なんだろうけど、でも、アレと違ってオチには微妙に納得がいかないような。やはり歌野に期待することはここまで捩れたストーリーをそれでも必死でハッピーエンドに持ってい…

沼田まほかる『九月が永遠に続けば』

ああ、また『孤虫症』みたいな、イヤな感じに“女”なキャラクターばっかり出てくる鬱陶しくて下品な話を読まなければいけないのか……と沈んだ気分で読み始めたものの、そうでもない風に展開してくれたのでよかった。主人公を始め、登場人物が逃げたり甘えたり…