三田村信行『タンス男がやってくる』

三田村信行ゴリ推し期間はまだ続きます。こちらの本は例によって例のごとしな不条理ホラー短編集。いくつか印象に残った話の感想を書いていこうか。総合的にはかなり面白い本でしたよ。
「飛ぶゆめ」クラスのみんなの間で、飛ぶ夢を見てそれについて話すことが流行っている。まだ飛ぶ夢を見られない大助は焦るが……というお話。クラスで飛ぶ夢について話すコミュニティが出来ていく様子がまるで性質の悪いカルト教団みたいに描かれていてたいそう不気味。一見ハッピーエンドな終わり方もすげー怖。
「ふたつ死体」古典怪談「死して二人となる」*1を元に小説を書こうとするホラー作家の卵は奇妙な出来事に巻き込まれていく、というお話。いや、だから子供向けに入れ子構造の話なんか書いてどうするんだよと言いたい。オチが綺麗に決まってて怖いと言うより奇妙な感じ。
「タンス男がやってくる」表題作。子供達の間で噂のタンス男。遂に僕達の街にもやって来るらしいのだけど、どこにも見つからなく……というお話。西澤保彦みたいな「普通の子供の中に実はこんな汚い心が」的オチがついててそれも面白いんだけど、そのオチの前の容赦なくホラー的情緒を台無しにする展開がもっと素敵。集中の個人的ベスト。