H・P・ラヴクラフト『ラヴクラフト全集1』

ご存知創元推理文庫ラヴクラフト全集第1巻。故あって読みました。ふむふむ、これがラヴクラフトか。あまり趣味じゃないぞ。とりあえず四篇収録してあって、一番面白く読めたのは「壁の中の鼠」(悪評高い先祖の屋敷に住むことになった主人公は、毎晩鼠が壁の中を駆け回る音を猫とともに聞くが……というお話)。ゴシックホラーっぽい道具立てがラストで一気に総崩れ、そのまま突っ走って戦慄のオチに達するというグダグダな構成が面白い。
他、「インスマウスの影」は怪異の正体の全体像がなかなか出てこない焦らしっぷりがホラー映画の王道っぽくて楽しい……と思ってたらあんなオチだし。「闇に囁くもの」とい言い、なんとなく全体的に生理的嫌悪感の描き方が押し付けがましくて、あまり気持ちよく気持ち悪がれなかった、ってな言い方で伝わるでしょうか。いやだって人種差別に加担してるような感覚が捨て切れないんですもの。意図的にやってるんだろうけれど。