飛浩隆『象られた力』

四編を収録したSF短編集。僕は作者が幻の作家扱いされてた経緯とかについては全く知らないんですが、ガチガチのSFっぽい設定を柔らか味のある文章で書いてるあたりの違和感が気になった。これを楽しめるときと楽しめないときでこっちの嵌り込み度が変わる感じ。
集中最も楽しめたのは「呪界のほとり」(奇妙な宇宙空間“呪界”の旅人である主人公がはぐれたところをおかしな爺さんに助けられるが……というお話)。あくまで軽く、まるで連続アニメの1話を抜き出したようなのんびりムードの中に急展開を詰め込んだヘンな感じと、呑気なオチが好み。「デュオ」(主人公はシャム双生児の名ピアニストの調律を受け持つことになるが、彼等にはある秘密が……というお話)における超常音楽バトルの描写も面白かった。