福澤徹三『壊れるもの』

傾きかけた会社での辛い仕事に加え、家に帰っても家族に疎まれる陰鬱とした日々を過ごす中年サラリーマンの主人公は、このところ家のそばの丘から聞こえる奇妙な物音が気になっていて……というお話。
サラリーマンの暗い未来の最大公約数的なエピソードの羅列で読者を辛い目に遭わせておいて、弱ってるところをラストで逃げ場のない怪の世界にサッと追いやるヒドい小説。面白かったけれど、予想範囲内のオチを延々引っ張る展開はいくらかタルい部分もあって、やはりこの人の本は短編のほうが好きかな。それにしても中盤は本当に読んでて辛かった。