森山赳志『黙過の代償』

第33回メフィスト賞受賞作。思えば遠くへ……いや、なんでもない。えーと、今回はポリティカル・サスペンスというところでしょうか。熱い理想を心に抱く青年が皮肉な運命やすれ違いを熱さで乗り切る話ですが、主人公がそこまで熱い奴に見えない、というところがまずいかな。周りの人に影響されてばかりのようで、一本通った筋が見えなく、だからこの男に説得される周りの連中なんなの? という気がしてしまう。
まあ、それでも立場の違う人々が結果的に一つの理想の下にまとまる燃え展開はそこそこ楽しめます。サスペンスとしても悪くはないけど、意外な真相は最後まで取っておいたほうがいいと思うよ。