高里椎奈「蝉の羽」

珍しく地味な感じのタイトル。と言うわけで薬屋シリーズ十巻目なわけですが、あんまし楽しめなかったです。
前巻と前々巻がけっこう面白かったことから考えて、このシリーズはメインの妖怪三人をあまり全面に押し出さずあえて狂言回し的な役割にとどめ、相談者を巡る人間模様を描くことに集中すると良い感じになるのでは、と個人的には思っているのだけど、それでいくと今巻は微妙なところか。でもこれも個人的に思っているこのシリーズの魅力、「結局結論は相田みつをとか326レベルの人生訓と言うか生きるヒントなのに、そこに到達するまでにめちゃくちゃ回り道するところ」は今巻でも踏襲されていたと思う。書きながら思ったけど、これは褒め言葉になってるだろうか。褒めてるつもりなんだけども。
さて、ではどこが悪かったのかと言うと、身もふたもない言い方をしてしまえば、好感を持っていた(萌えていたと言い換えても可)キャラクターが血も涙もない仕方で退場させられたことによって非常にすっきりしない読後感になってしまった、というところなのです(ちなみにそのキャラクターとは和久井)。このシリーズはよくキャラ萌え狙いと言われますが、実は迂闊にキャラ萌えすると大変なことになるシリーズだと思う。
あ、そう言えば期待のキャラ來多川君は出てこなかったなー。