グレッグ・イーガン「しあわせの理由」

イーガン初読み。全体的にはけっこう好みだったかも。
例えば「闇の中へ」のかなりハードにSFでしかもまるっきり謎な空間「吸入口」の設定とか、「愛撫」におけるある絵画と全く同じ画面を現実に再現してみせることに執着を持つ人物、及び主人公も絵画の中にいる人物そっくりに改造されるというエピソードはなんだかシュール系現代詩にも通じるポエジーを感じて素敵。この二作が集中の個人的ベストかな。
ただし、そういう設定などに感じ入るのはあくまでそれらの存在理由が不明確だからで、言い換えれば僕はたぶん日常の中に全く説明なしにシュールな要素が紛れ込んでいるような物語(いい例が思いつかないけど、例えば川上弘美とかボリス・ヴィアンとかか)が好きであるという趣味の延長としてそれらが好きなのであって、「闇の中へ」における「吸入口」のルール(?)設定に主人公が勝手に意味付けしたりするところは個人的にはとっても気に食わなーいのですよ。あれでポエジー半減って気がした。
あと「ボーダー・ガード」の終わり方何だあれとか、不満もいろいろあるのだけど、総合的には久しぶりにぽえぽえ*1なものが読めて良かった。まる。

*1:ポエジーを感じたの意