山田風太郎『魔界転生』

まあ面白くないわけがないわけでありまして、面白かったですよ。史実上対決できたはずがない剣豪同士を対決させるのに転生という妖術を持ってくるところまではともかく、その転生の術がやたらとエログロな設定でまずニンマリ。それから、十兵衛対転生衆の対決の舞台がいちいち凝っていて、それが対決を左右するのが面白い。天守閣の上で対決とか、縄を渡した崖っぷちでとか、巨大な鐘のある寺院でとか。義理や人情を心得つつも根が飄々とした十兵衛のキャラはなかなかカッコいいし。
ただ、やっぱりこれを最も楽しめるのは作者と同じように「柳生十兵衛宮本武蔵の対決が見たい!」とか考える人だろうということで、伝説の剣豪として登場する主要キャラに特に思い入れがない、そもそも柳生如雲斎とか荒木又右衛門とか言われても知らないし、な僕にはそこまで興味が持てる本ではなかったですよ。まあね。