エラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』

全然読んでない国名シリーズの一冊。いわゆる「首切りの理由」ネタの第一歩を切り開いた作品とおぼしいのでそのへんの歴史的意義を認めつつ、面白かったのはミステリと関係ない部分でした。ヌーディストの島から連れ出した少女を乗せたボートで高笑いしながら現れる医者の登場シーンや、さあ事件解決だ、となった終盤に突然始まる呑気な三つ巴の追っ掛けっこが好き。メインの事件の残虐さが見えにくいほどにその周囲の人々や環境が妙に狂騒的に描かれていて、そういうところで楽しめてしまった、ということかな。
豪快なミスリーディングの仕掛け方(思わせぶりにしておいて一切フォローなし)やタイトルに関する意外な展開などなど、ミステリ的にも茶目っ気があって悪くない。