柄刀一『ゴーレムの檻 三月宇佐美のお茶の会』

主人公宇佐美護博士がヘンテコな事件に出くわし、そのたび同時に異次元の世界に入り込んでそっちでも事件に遭遇する、ってな「三月宇佐見のお茶の会」シリーズ第二短編集。
待望のシリーズ続編ですが、待ちすぎて前作『アリア系銀河鉄道』がどんな感じだったか忘れちゃった。でも、現実の事件と異次元の事件が(無理矢理)オーバーラップする、って趣向は前作には一貫してなかったはずで、正直この趣向はないほうがいいかと。無理矢理すぎるんだもの。そして、ヘンテコな世界でのヘンテコな謎解きが楽しかった前作に比べて、今作はむしろ現実の事件のほうがヘンテコ。「シュレディンガーDOOR」なんて、“シュレディンガーの猫”的事象を現実に出現させるために事件の設定がたいへん不自然になっていて、その不自然さが楽しい。この楽しさは高田崇史の千葉千波くんシリーズにも似てるかも。
いやでも「三月宇佐見のお茶の会」シリーズ続編ってことで僕が期待したのは、やはりヘンテコ世界のヘンテコ謎解きのほうなんだよなあ。そっちのほうで頑張ってほしかった。ということで、若干期待外れかな。集中の個人的ベストは前述の「シュレディンガーDOOR」です。