F・X・トゥール『ミリオンダラー・ベイビー』

ボクシングにまつわる短編集。みなさんご存知のように、表題作は映画化され、アカデミー賞を受賞しました。さて、この本に出て来る男達の生き様はいくらかナルシスティックであり、閉鎖的であったりもして、そのへん苦手だなあ、と思わせられるのだけど、やはりカッコいいところもあったりして。
例えば表題作で主人公のトレーナーと女性ボクサーの間に形成される擬似親娘関係はとてもささやかで切ないものだし、「凍らせた水」における、愛すべきヘボボクサーに加えられた暴力に対する戒め、これはやはりカッコいい。「フィリーでの闘い」なんかは南アフリカ観光小説として読むと面白かった。主人公が美術館に潜り込ませてもらうくだりなんか好き。
それにしても表題作、そういう話だったか……(詳しくはネタバレにつき自粛)。いかにもアカデミー賞を取る作品っぽい話で、映画を観る際はちょっと偏見入りそう。