服部まゆみ『この闇と光』(背景色でのネタバレ含)

暴徒によって権力を奪われた王の娘レイアは小さな別荘に監禁されていた。目の見えない彼女は優しい父を愛し、世話係のダフネを恐れ、字や数を教わりながら少しずつ成長してゆくが……というお話。
まずミステリ的な仕掛けについてはまあ、バレバレなわけですけども、これは別に上手く隠せていないということではなく、読み手側(僕)がこういうものに慣れ切ってしまったからでしょうな。細かい伏線に惜しいところはある(生理と見せかけて実は夢精、のくだりなんて面白い)だけに、力技で読者の目を違う方向へ向けさせる工夫が欲しかったところ。
次第に浮かび上がって来る“二人”の真の関係の描き方については、若干耽美的すぎると言うか「夢見すぎ」な感があってあまり入り込めず。“被害者”が“加害者”にあのような感情を抱いちゃう展開にしては、説得力がかなり足りないでしょう。