故郷の香り

都会の役所勤めの主人公は久々に故郷の村に帰って来る。そこでばったり出会ったのは、彼が一時心を交わした相手・ヌアンだった。彼女が聾唖者のヤーバと結婚し、二人の間に娘までいると聞いた彼は驚くが……というお話。
感傷的でノスタルジックな初恋回顧話のくせに、語り手たる主人公が全く好感の持てない人物だったりするのが大問題。こ、こいつ、自己弁護の他にすることはないのか!ヌアンと劇団員の初恋を描いたくだりなんかは『初恋のきた道』(→感想)ばりに甘酸っぱくて胸がギュンギュン鳴ったし、雨の日にヤーバがヌアンをおぶるシーンも泣けた。それなのに肝心の主役二人の触れ合いが盛り上がらないってのはなあ。あともう一つ、この二人の仲を引き裂く一因となるあの“悲劇”はあまりに安易すぎ。
ヌアン役のリー・ジアは眠そうな目に厚い唇がなんとも“乙女”っぽくて、綺麗。ヤーバ役の香川照之はインテリが透けて見えるのが難点だけど、駄々っ子演技はお手の物でまあいつも通りやってます。よって満足。