きみに読む物語

ある施設にいる痴呆症の老女の元に毎日通い詰め、物語を読み聞かせる老人。彼が読んでいたのは、ひと夏の恋の末引き裂かれ、互いを思いながら悲しい時を過ごした一組の男女の物語だった……というお話。
いやあ、いくらなんでもこれはダメだ。老人カップルの愛に満ちた触れ合いに若い頃の二人の姿が重なって見える瞬間が一度としてないのに、このオチで泣かせられるとでも思ったんだろうか。不愉快ですらあったぞ。“物語”内のお話も恋人同士の間の障害をやたらしつこく説明したと思ったらそれを一瞬で乗り越えさせてしまって、唖然。なんだこりゃ。
そもそも若い二人より老人二人のほうがずっとキレイに見えるというのは問題があるんじゃないか。この映画で唯一美しかったのは冒頭のボートを見つめるジーナ・ローランズのショットで、彼女と彼女に読み聞かせるジェームズ・ガーナーは悪くない。でもライアン・ゴズリングはただの未練がましい男にしか見えないし、レイチェル・マクアダムスはお嬢様と言うより尻軽女に見える。なんだろうな、若い二人にもっと適当な役者を嵌めておけば何か違ったんだろうか。