鯨統一郎『九つの殺人メルヘン』

日本酒バー<森へ抜ける道>の常連である刑事工藤は今日も同じく常連の山内やマスターと益体もない回顧話で時間を潰す。そうして話が未解決の事件のことに及ぶと、決まって桜川嬢がやって来て、華麗に謎を解いてみせるのだった、という連作短編集。
ここ最近わりとしっかりした本ばっかり読んでたんで一回休みの意味で鯨を読んでみました。初期作品なだけあって、事件の謎解きと古典メルヘンの新解釈の絡ませ方がそれなりに見られるものになっていて、鯨にしちゃマシなほうですね。それでもやっぱり、オヤジ三人組の語る日本酒薀蓄やら昔懐かしバナシだのがミステリのほうに全く絡まないどころか雰囲気作りにすらなってないあたり、さすが鯨!短編集全体のオチの付け方も例によって適当に無理矢理デッチあげた感が強くて楽しいなあ。それにしても日本酒、美味しそうじゃないか。