ミッチ・カリン『タイドランド』

11歳のジェライザ=ローズは、母親がヤク中で死んだ後、父親に連れられて祖父の家にやって来た。だけれど父親もすぐに椅子に座ったまま動かなくなり、彼女は一人、首だけのバービー人形4体と遊び呆ける……というお話。
えーと、これって要は『柔らかい殻』(→感想)の女の子バージョンなんですね。そう聞くと面白そうだけど、この小説の主人公ジェライザ=ローズが思い描く幻想は妄執の域には達していなくて、その分スリルに欠ける。終盤その幻想に性的な要素が絡んで来るとやっとスリリングになるものの、でもこういう暗い少年(少女)期の話に“性”やら“死”やらを絡ませるならもっと捻ってくれないと。これは安易すぎてちょっと興ざめ。テリー・ギリアムがこの小説を映画化するらしい*1けど、よっぽど巧くやらないと『柔らかい殻』の劣化コピーと言われるんじゃないだろうか。心配だ。
ところで、これを読んでて一番衝撃を受けたのは、ある重要なネタが某人気国内作家の近作と思いっきりバッティングしてることでした。まさかあいつ、ここからパクッたんじゃないだろうな。

*1:imdbのキャスト表見てたら、ディキンズ役がブレンダン・フレッチャー(NHKの海外ドラマ『私はケイトリン』のエリック役でチャームをだだ漏れにしてた若手俳優)だった!ギャー!これで公開日に観るの決定。