田中啓文『UMAハンター馬子 完全版1』

伝統芸能“おんびき祭文”の第一人者蘇我家馬子とその芸に惚れ込んで弟子入りした若娘イルカは今日も日本の奥地での公演へと出掛けるが、何故か決まって妙な生物の噂に遭遇し……という連作短編集。
いやー完全版出てよかったよかった。ハヤカワ偉い!なわけですが、実際読んでみると田中啓文作品としてはそんなに癖もなくスルスル読めてしまっていまいち物足りない、といった塩梅でした。真っ当すぎたこないだの『笑酔亭梅寿謎解噺』(→感想)と比べればだいぶドギツイし、ネッシーやらツチノコやらには僕も興味がないこともないので楽しめはしたのだけど、もっとギャフン!ってな感じの怪異の正体が拝みたかった。それにやはり駄洒落もグロ描写も控えめな田中作品というのはちょっとガッカリしてしまう。
集中のベストは「湖の秘密」。ネッシーもどきの外形描写がしつこくってたまらない。