綾辻行人『暗黒館の殺人』(背景色でのネタバレ含)

九州の山奥にある黒一色に包まれた屋敷暗黒館。そこに集う浦登家の人々は年に一度の特別な儀式<ダリアの日>を間近に控えていた。そこへ屋敷内の塔から落ちて気を失った江南という思わぬ闖入者を迎えることになるが……というお話。
いや、何に驚いたって自分が未だに「館シリーズを読む楽しみ」なんてものにある程度浸れてしまう人間であるとわかったのが一番のサプライズだったんですが。そうか、もう少し早く読んでもよかったかな。12年ぶりなのに本格ミステリとしての体裁が全く進歩していないマンネリ具合は、この小説の長さとともに、楽しめなかったと言ったら嘘になるのだけど、さすがにメイントリックの使い方まで“あの頃”のままなのはどうかと。「ネタ読めちゃったよ」ってのが最大の攻撃文句になりうる、今や数少ないミステリのうちの一作なんだから、そのへんガードが甘いのは責められるべきでしょう。
あと、“名探偵”を登場させられないならそれはそれでそれなりに劇的な形で真相が判明するように工夫してくれないと。全てが明かされた後も悲劇だの悪意だのが浮かんでこないただの茶番劇みたいなラストには大いに閉口しました。つーか、そろそろ館物でラスト火事起こして全部消すのは禁止な。
と言うわけで、まとめとしては、待たされた者への答え方が『彩紋家』に負けてるってことでどうだろう。