恋する幼虫

虐められたり従兄弟のお姉さんの異常な性交渉を見ちゃったりで歪んだ性格に育った売れない漫画家の主人公は、新人の気弱な女性編集者を虐めるうちに、ある日、彼女の頬を刺してしまう。しばらくして彼女を訪ねてみると、彼女の頬には奇妙な傷が出来ていて……というお話。
なんともゲロ甘酸っぱくて素敵。芳しい胃液臭を嗅いだ、という感じ。インディー映画らしい画質や美術の安さを完全に味方につけた変態ちっくでゲログロな画面にひたすら呆気に取られているうちに、序盤はあんなにキモいキモいと思っていた主人公とヒロインに完全に感情移入させられ、終いには不条理ギャグみたいなラストの絵面が途轍もなくハッピーなものに見えてしまうという素晴らしさ。確かに、これは純愛映画と言うしかないかも。もう僕の頭には、ここぞというシーンで必ず流れ出すあのテーマ曲がこびりついて取れません。一体どうしろと。
キャストはみんな良くて、特にヒロインの新井亜樹なんて貧相な顔のくせにどんどん可愛らしく見えて来て参る。ラストの笑顔なんて涙物ですよ。主演の荒川良々は完璧なハマり役でちょっと嫌味なくらい。ヒロインの元彼役の松尾スズキも出て来た瞬間にあ、“女を無意識下で支配する嫌な男”だな、とわかる好演。


あ、DVDに収録されていた番外編『幼虫のはらわた』のほうはですね、これが今度はゲロ甘酸っぱいホモセクシャル映画なので、腐女子腐男子の方々にお薦め。