宮部みゆき『理由』

東京都荒川区の高層マンションの一室で起こった一家四人殺害事件。しかし、その四人はその部屋に住んでいるはずの人物ではなく、お互いに全くの他人同士だった……というお話。
直木賞獲って宮部が一段と名を挙げた大作ですが、これが面白くない。『火車』(→感想)でも思ったけれど、「いい人」が弱者に優しくない制度*1に引っ掛かってしまう悲劇、という構図がまずピンと来ない。名のある登場人物が大量に出て来てそれぞれの事情を語るという形式は大いに期待させるものの、本筋とあまり関係ないところばっかり描き込んであるくせにメインの事件の真相はなんてことないものでがっくり。これでは到底事件が“多くの人々の事情の交わり”の末にあるものだなんて思えない。でも分量のわりに読み疲れもないし、リーダビリティは十分あって、巧いのは巧いんだけど。
で、これ読み終わったので次の日映画版を見たわけです。

*1:この場合競売制度のこと