クイール

黒ブチ模様のあるラブラドール・レトリバークイールの、生まれてすぐパピーウォーカーに引き取られ、その後盲導犬としての訓練を受け、渡辺という視覚障害者のパートナーとなり……という一生を描いたお話。
変なのー。こんな変な映画だとは思わなかった。印象としては歴史の教科書の「クイール史」とかいう一節を読まされてるような感じで、恐ろしく淡々としたエピソード描写が湿っぽくなりそうな箇所をスパッスパッと飛ばして続いていく……って、これでは泣きに行った観客は困惑してしまうのでは。それでも思いがけないシーンが“泣き”喚起力を持っていたりして油断できない。クイールが夢を見たり雪やら流れ星(どちらもCGモロバレ)を見たりする、陳腐に“ファンタジック”なシーンが何度か挿入されるのも謎。犬の頭の程度に合わせたってことなんだろうか。面白かったけど、やっぱり変なの。
人間の出演者はほぼ全員クイールの背景として扱われている中、渡辺役の小林薫盲導犬訓練所の所長役の椎名桔平のみかろうじてちゃんと映してもらっていて、二人ともなかなかの好演。誰が見ても巧い小林薫はともかく、あまり好感を持ったことのない椎名桔平の強引さがここでは魅力的に見えて感心した。