ジョイス・キャロル・オーツ『生ける屍』

眼球からアイスピックを刺し込んでロボトミー化し、性奴隷にして仕えさせたい!という欲望の元に次々と少年を襲うも、ある時失敗して捕まり、今は執行猶予中の主人公Q・P。そんな彼の前に新たな獲物が現れる……というお話。
実在の殺人鬼ジェフリー・ダーマーをモデルとした話とは言うわりに猟奇的な感じもしなければ怖くもない(エロくはあるが)。どっちかと言うと、無自覚なダメ男文学の系列に連なる感じで読めて、面白い。31歳にもなってまだ大学生(親にお情けで貰った管理人の仕事あり)で恋人も友達もいない主人公の生々しいダメっぷりが何故かしみじみと感じられて、終盤ではほとんど悲哀感すら漂っているあたりとても好き。
訳者あとがきでは文体が舞城王太郎に近いという指摘がされてました。ジャンクな挿絵が入るあたりは似てるけど、舞城ほど「いかにも」な文章が連なってるわけではないと思うなあ。