ケネス・J・ハーヴェイ『自白の迷宮』

連続殺人の咎で拘留中の文学教授は精神科医の鑑定と刑事の取調べに役立てるため、自らの殺人の記録と過去の体験を日記に綴ってゆく。日記の中で重要な役割を果たすカサンドラという女性はどうも実在しないようなのだが……というお話。
どこまでが真実でどこからが虚構なのか、徹底的に曖昧模糊とした記述は「悲哀」寄りになったり「猟奇」寄りになったりしながらも結局ラストに至っても曖昧模糊なまま。でも面白かった。乾いてるんだけど幾分湿り気のある暴力的で饒舌な日記の記述は、ところどころやたらと含みがあって好き。訳者もいい仕事してるなあ、と思ったら一連のジャック・ケッチャム作品を訳した人でした。
訳者あとがきでデヴィッド・リンチの名前が出てるのだけど、デヴィッド・リンチの映画ってこんなんなのか。じゃあ見ようかな。