佐藤多佳子『しゃべれどもしゃべれども』

頑固で短気な二ツ目噺家の元で落語を習うことになった会話が嫌いなOL、吃音の出るテニスコーチ、関西弁のせいで虐められている小学生、解説となると喋れない元野球選手の四人。時を同じくしてスランプに陥った噺家は悩みながらも彼等を教えていくが……というお話。
久しぶりにジャンル小説でも純文学でもない普通の小説を読んだら、心のあちこちが気持ちよく麻痺するような心持ちを覚えました。すごく気持ち良かったけど、こういうのはもうしばらく読まなくていいや。他人に何かを教えるうちに自分の悩みもいつしか解決して、ついでにかけがえのない関係が生まれるっていうスポーツ映画の王道のようなストーリーを嫌味なくスムーズに読ませてくれる筆力は大したもの。キャラ描写も脇役に至るまで魅力的な上に、最後はささやかながら暖かいハッピーエンド!間違いなく極上の娯楽小説ではあるので万人にお薦めできそう。
ちなみに、僕の好きなキャラは湯河原さんですよ。萌えるとこまではいかないけど。