氷川透『逆さに咲いた薔薇』

死体から足の小指が切り取られ、赤い靴下が履かされるという女性を狙った連続殺人が発生する。元テコンドー全日本選手の新米刑事・椎名梨枝は友人の“名探偵”祐天寺美帆の意見を聴きつつ捜査を進めるが……というお話。
うわびっくり。これ本当に氷川透が書いたんですか?今までと全然作風が違うよ。性問題に関する頑なさは相変わらずだけど、登場人物がほとんどネチネチ思考をしないのが画期的。まともな刑事モノとして成立させるためには“ダサ”に堕することも辞さず、な感じは好感度高い。ただ、面白いかと言うとこれは微妙な話で、今までのねちっこい氷川透がわりと気に入っていた者としては若干期待外れな面も。意外な真相とか面白いトリックとかを考えるのが巧い作家じゃないだけあって、いつもみたいに推理をこねくり回す過程がないとどうにも地味に見えてしまうんだよなあ。
キャラクターに関してはいつもより数倍萌えやすいと思いますよ。主人公に容易に感情移入可能だし。ただ、祐天寺美帆に関しては『最後から二番目の真実』よりさらに魅力が薄くなってる感あり。